ビルトインスタビライザーをわかりやすく解説します!

 

ビルトインスタビライザーは「景気を自動的に安定した状態にしてくれるもの」

ビルトインスタビライザーとは、財政における景気の自動安定装置のことです。ビルトインスタビライザーとして代表的なのは、政府が実施する累進課税制や社会保障制度。 景気が良い時には市民から取る税収を増やし景気を抑制、景気が悪い時には社会保障費を増やし国民にお金を行き渡らせることで、景気を安定化させています。 ビルトインスタビライザーがあれば、政府がわざわざ政策を変更したり新しい制度を作ったりしなくても、景気変動を抑えることが出来ると言われます。 しかしビルトインスタビライザーがあるからと言って景気が常に安定しているわけではないため、制度に頼らない財政政策も時には必要です。

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ビルトインスタビライザーの仕組み

「景気を安定化させる」と言うだけでは、少しわかりづらいかもしれません。 ビルトインスタビライザーとは基本的に、国民の持つお金を景気に合わせて勝手に調整する機能。 景気が良い時は、国民がお金を持ちすぎてバブル状態になってしまわないよう、税金を多く取り過熱した景気を落ち着かせます。 逆に景気が悪い時は、国民から取る税の額を抑え、保証金や補助金を与えることで国民にお金が行き渡るようにします。 ビルトインスタビライザーの機能があることで、景気が過熱し過ぎたり、不況が長く続く事態はある程度防げると言われます。 ここからはビルトインスタビライザーの具体的な仕組みについて、累進課税、社会保障に分けて解説していきます。

 

累進課税

累進課税

累進課税(画像:Unsplash

ビルトインスタビライザーの例として代表的なのが、累進課税です。 累進課税とは、個人の収入や資産に合わせて、税率が変わる仕組みのこと。 この累進課税が行われているのが、所得税です。働いている人なら、年収によって取られる税金が大きく上下する、ということも理解しているでしょう。 また所得税以外に、相続税でもこの累進課税が行われており、「たくさんお金を持っている人から税金を多くとり、お金の少ない人からは取る税を減らす」という制度は多くの国民に馴染みあるものでしょう。 ビルトインスタビライザーの観点で言うと、景気が良い時にたくさんの税金を取り、景気が悪い時には国民から取る税金を減らせる累進課税には、景気調節機能があると言えます。累進課税制度なら所得の高い人から多くの税金を取るため、景気が良く、所得の高い人が増えた時は取る税金を増やし景気抑制、景気が悪く、所得が下がったときには税収を減らし景気改善、という仕組みで景気を調整してくれます。 もちろん累進課税制度だけで不況が一気に良くなることはありませんが、景気が悪く、収入が低いなか支払う税金が減る制度があれば、税負担からくる景気の悪化をある程度防げるでしょう。

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社会保障制度

(画像:Unsplash

社会保障制度、と言われる制度の中には生活保護や失業手当、補助金など多数の制度が含まれています。 基本的に社会保障制度とは、国民が困ったときに使える制度。失業した時に手当をもらえたり、生活が苦しい時に手当をもらえたりと、特に不況時には利用者が増えます。 社会保障制度では、景気が良い時は困っている人が少なく保証金、補助金などが減るため、お金が行き渡りすぎて景気を余計に過熱させる、ということはありません。 一方景気が悪い時は失業者が増え、社会保障制度を利用する人が多くなります。不況時は国民の収入が減るため、社会保障制度を利用押して財政からお金を渡し、景気の悪化を防ぎます。 こうした点から、社会保障制度はビルトインスタビライザーとして機能していると言えるのです。 不況時は社会保障費が増え、税収が減るため財政が赤字となることもあります。しかし社会保障制度があることで、ある程度景気変動を抑制することが出来ているのです。

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ビルトインスタビライザーの提唱者

ビルトインスタビライザーは、景気を自動的に調整してくれる機能。こうした機能について明確な提唱者がいるわけではありませんが、累進課税制度、社会保障制度が生まれた時からすでにこのビルトインスタビライザーが始まっていたと言えるでしょう。 日本で累進課税制度が始まったのは、1887年。所得別に税率を1~3%と5段階に分ける「単純累進税率」と呼ばれるものでしたが、この時点である程度ビルトインスタビライザーとしての機能は果たしていたでしょう。 また社会保障制度を始めたのは1883年、ドイツのビスマルクだと言われています。もともと労働者の保護と階級格差の解消を目指し実施された制度でしたが、現在は多くの国で社会保障制度が行われ景気の安定化にも役立っています。

ビルトインスタビライザーとフィスカルポリシーの違い

ビルトインスタビライザーは、政府などの誰の意図とも関係なく自動で景気を調整してくれる制度のこと。一方フィスカルポリシーは景気を調節するため、政府が恣意的に財政政策を行うことです。 フィスカルポリシーは「裁量的財政政策」とも言われていて、ビルトインスタビライザーの機能だけでは景気が調整できない時に実施されます。 ビルトインスタビライザーだけで大きな景気変動に対応するのは難しい場合、フィスカルポリシーとして公共事業など政府の助けを得て恣意的に景気を調節するのです。 そのためニュースなどではこのビルトインスタビライザーとフィスカルポリシーが同時に説明され、混乱してしまう人が多いのだと考えられます。 しかしビルトインスタビライザーとフィスカルポリシーは本来大きく異なるもの。 ここからはフィスカルポリシーについて解説するので、ビルトインスタビライザーの機能と合わせてチェックしてくださいね。

 

フィスカルポリシーは「公共事業」と「租税政策」

(画像:Unsplash

フィスカルポリシーはとは政府が意図して行う、景気調節のための政策全般のこと。フィスカルポリシーには、大きく分けて2種類あります。 1つ目は、公共事業。不況期に公共事業を増やすことで雇用を増やし、景気を改善させる政策です。 2つ目は、租税政策。好況時は増税を行い景気が過熱するのを抑制し、不況時は取る税金を減らし国民の負担を軽くします。 「累進課税制度があるから、租税政策はいらないのでは?」と感じる方もいるかと思いますが、基本的に租税政策が行われるのは大きな景気変動が起こったとき。ビルトインスタビライザーが機能しきれない部分を、政府が意図的に調整しているのです。

まとめ

ビルトインスタビライザーは、あえて政府が政策を講じなくても景気を調節してくれる、機能です。 しかしビルトインスタビライザーに頼るばかりではなく、政府の意図的な財政政策、フィスカルポリシーも時には必要だと言えます。 景気や財政について考える際には、ぜひ参考にしてくださいね。