ゼロックスがHP買収に向けTOB。買収の目的やメリットはHPにあるのか？│ビズキャリonline　仕事と生活

ゼロックスがHP買収へ

1分でわかるニュースの要点

買収価格を１株22ドルから24ドルに引き上げ
複数回の提案拒否・今回で成立となるか
HPのメリットは・敵対的TOBの可能性も

HPがゼロックスの買収提案を拒否。HPが逆買収を匂わせるも敵対的買収へ。11月17日、米パソコン大手のHPが協議していた米ゼロックスの買収提案を拒否したと発表しました。HPが送った米ゼロックス宛ての書簡には、「HPの価値を著しく過小評価しており、株主の利益にならない」と拒否の理由が示されていたと発表しました。しかし、HP側は買収に含みを持たせる発言もしており、今後の両社の動向が注目されています。

TOB価格は1株24ドルに引き上げ

ゼロックスの発表では3月2日を目処にTOBを実施するとしており、従来提示していた1株22ドルから2ドルプレミアムの付いた24ドルに引き上げました。同社はHP株を18.40ドルのキャシュとゼロックスの株式0.149株（計22ドル）で総額約340億ドル（約3兆7350億円）を支払うとしています。この買い付け案はHPの30日間の出来高荷重平均株価（VWAP=ブイワップ）の17.00ドルに41%を上乗せした額に相当します。

3月2日を目処に買い付け開始か？

ゼロックスは3月2日を目途に買い付けを開始し、HP株の過半数の取得を目指す考えです。ゼロックスは昨年の買収提案の不成立を踏まえ、HP側の取締役会が新たな条件に賛同しない場合は敵対的なTOBに発展する可能性を示唆しました。ゼロックスとHPの交渉は複数回行われており、2019年11月の交渉ではHPの取締役会が全会一致で反対した経緯があります。それだけ、HPが提示した条件を拒否した場合は敵対的なTOBに発展する可能性は十分にあると市場関係者は見ています。

何度もHPに買収提案をしてきたゼロックス

ゼロックスはHPに対して何度か買収提案を行ってきました。まず昨年11月5日、そして同21日に買収提案書を同社に送付しましたが合意は得られませんでした。同25日にはゼロックスの提案する合併にはメリットがなく同社は自社を著しく過小評価していると交渉を拒絶した理由を発表しています。

2019年11月から提案もHPは拒絶

ゼロックスは2019年11月数回に渡って買収提案を行ってきましたが、その全てを拒否されています。当時のHPの時価総額は約290億ドル（約3兆1600億円）以上だったのに対し、ゼロックスの時価総額は約85億円ドル（約9260億円）と、額面ではHPが高値だったからです。 HPとしては自社の評価が著しく低いと述べており、同時にゼロックスが提示額を支払う能力があるのか疑問である、というコメントを出しています。またゼロックスが買収資金を調達できた場合でも、同社は大きな負債を抱えることになると提案を拒否した理由を述べています。

ゼロックスのカール・アイカーン氏の意向も大きいか？

今回の買収劇の影の主人公ともいえるアクティビストのカールアイカーン氏は富士フィルムホールディングスによるゼロックス買収で一方的に合意を破棄する提案を出し、米ゼロックスは賠償請求を起こされています。それだけにゼロックスとHPの買収にも何らかの圧力をかけてくるのは確実で、カールアイカーン氏は4日HPの株主に対してゼロックスの買収提案への協力を強く要請しています。カールアイカーン氏は両社の大株主でもあり、HPに対して「統合のメリットは明らかである。」として、合併に理解を求めています。

買収によるメリットは？

ゼロックスはHPのTOBの成立によって売上高が最大で15億ドル（約1600億円）になる可能性があると見込んでいます。 HPは全世界に法人・個人向けにA4タイプの小型事務機器の広いシェアを持っており、ゼロックスの強みであるA3事務機と合わせることで業界のシェアを独占する狙いがあると見られています。

シェア拡大を狙うゼロックス

ゼロックスはHPの株主向けに行ったプレゼンテーションで、今回の買収が成立すれば合併後の企業価値は1株31ドルになるだろうと強調しています。 HPはの2019年10月期の売上高（約587憶ドル）のうちプリンター事業が3分の1を占めています。HPはA4サイズの事務機の世界シェアを約半分持っており、ゼロックスが強みとするA3サイズのプリンターと合わせることで、双方の利益になるだろうとしています。またゼロックスは新会社の初年度のフリーキャッシュフローは40憶ドルを超えると想定しています。

HPにメリットはなしか？

HPはゼロックスとの合併に含みを持たせているものの、ゼロックスの財務状況が健全なものであるかを見極めたい考えです。ゼロックスのプリンター事業はここ最近低迷しており、HPの持つ小型プリンターの世界的シェアを取り込むことでプリンター部門の立て直しを図りたいと考えているようです。しかし市場はこの動きに懐疑的で、今回ゼロックスがHPの買収を改めて表明したことで株価は上昇したものの、12日現在22.48ドルとゼロックスの提示価格24ドルを下回っています。

敵対的TOBに発展する可能性は大

ゼロックスの事業規模はHPの３分の１程度で、市場では今回の買収に疑問を呈する声も聞かれまています。しかしアクティビティのカールアイカーン氏がゼロックスに協力的な姿勢を見せていることもあり、その行方を注視しています。ゼロックスは買収資金として、みずほフィナンシャルグループや米シティバンクなどから240億ドル（約２兆６千億円）を調達したといわれています。今後のHPの出方次第では敵対的なTOBに発展する可能性は大きいといえるでしょう。

富士フィルムが富士ゼロックスの株25%を取得。米ゼロックスの買収は断念富士フィルムは11月初旬に、米ゼロックスが保有する富士ゼロックスの株式25%を取得すると発表しました。富士フィルムが米ゼロックスに支払う取得総額は23億ドル（日本円で約2530億円）といわれています。米ゼロックスと争っていた統合合意破棄による損害賠償請求は取り下げるとし、米ゼロックスの保有株式と関連持ち分を取得します。

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