ワーク・ライフ・バランスとは 最近使われる場面とその意味を解説します

ワーク・ライフ・バランスとは

女性の社会進出に伴い「ワーク・ライフ・バランス」を重視する企業は「女性が働きやすい職場である」と言われます。「ワーク・ライフ・バランス」に理解がある企業は社会的に評価される時代となりました。 このように最近よく耳にする「ワーク・ライフ・バランス」について、その意味と由来をご紹介します。

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ワーク・ライフ・バランスの意味は「仕事と私生活の比重」

ワーク・ライフ・バランスの意味は「仕事と私生活の比重」です。 広い意味では人生における仕事と仕事以外の自分や家族との時間の比重です。また、狭い意味では1日24時間を仕事と仕事以外の時間にどのように切り分け、そのベストな比重をテーマとする用語です。 社会変化や人生に関する考え方が変わり、社員のワーク・ライフ・バランスを尊重する自由な働き方の導入を検討する企業が増えています。

英語のWork-Life Balanceに由来する

ワーク・ライフ・バランスは、英語のWork-Life Balanceに由来します。 Work-Life Balanceとは「仕事と生活の調和」もしくは「仕事と仕事以外の私生活の時間のバランスをとる」ということです。 「滅私奉公(めっしほうこう)」の諺(ことわざ)がよく知られているように、個人の自由より集団規律や社会との調和を重視する日本社会では、なかなか受け入れにくい部分があります。 しかし、社会の成熟化とともに個人の自由な時間が大切と考える人は増える傾向にあります。

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ワーク・ライフ・バランスの実現のための取り組み

政府もこうした社会変化に伴ってワーク・ライフ・バランスに配慮した柔軟な働き方実現を支援する上で必要な取り組みを行っています。 そうした取り組みのうち、「ワーク・ライフ・バランス 憲章」および「ワーク・ライフ・バランスの観点からの働き方改革」についてご紹介します。

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ワーク・ライフ・バランス 憲章

ワーク・ライフ・バランス憲章とは、仕事と生活の両立できる社会を目指すために策定された理念、または行動指針を明文化したものです。 目指すべき社会の方向性、および目標とその目標に到達するための官民労使の果たすべき役割について規定されているのが特徴です。

ワーク・ライフ・バランスの観点からの働き方改革

労働人口の減少をカバーするために女性の活躍を後押しし、定年を迎えた高齢者が定年以降も無理なく社会の一員として活躍できる社会を実現する必要があります。 働き方改革とは「これまでの働き方」を根本から見直し、より「柔軟で多様な働き方」が選べる環境作りのための取り組みの総称です。 労働行政を所管する厚生労働省が中心になり、働き方改革を促進するための関係法令の制定、事業者支援などを積極的に行っています。

ワーク・ライフ・バランスの課題と問題点

ワーク・ライフ・バランスに配慮した柔軟な働き方の実現は、企業や職種によって困難なケースがあります。 こうしたケースでは、政府の取り組みを職場に導入・促進する上で、問題点を抱えています。 問題点と課題を合わせてご紹介します。

導入の問題点

ワーク・ライフ・バランスを職場に導入する際の問題点に次のことがあります。 ・職場に導入する具体的な手順がわからない ・経営者が同意しない ・導入することで余分なコストが発生する 「ワーク・ライフ・バランスを実現するのは理想だが、現実には難しい」というのがビジネス現場の声ではないでしょうか。 ビジネスには繁閑期というものがあり、職種や職務によっては交替が難しい業務があります。また交替できる職種や職務であっても、ワーク・ライフ・バランスを導入するために、交替要員を多く抱えることになれば人件費が余分にかかってしまいます。 こうした事情からワーク・ライフ・バランスを職場に導入することに慎重な経営者が多いのが実態となっています。

促進の問題点

職場に導入したワーク・ライフ・バランスを促進する上で問題点に次のことがあります。 ・職場のチームワークの低下 ・職場内の人間関係上のトラブル懸念 ・勤務時間外手当カットによる手取り減少 勤務時間を柔軟に、そして短くなって手取りが減らないのであればワーク・ライフ・バランスを促進することは容易かもしれません。 しかし現実の職場では、様々な考え方の人が会社の発展や自分や家族の暮らしに必要なお金を得るために、一定の秩序のもとにチームを組んで、お互いに協力して業務をこなしています。 そうした職場環境下で、「ワーク・ライフ・バランスだ」と個人が自己都合ばかりを主張すれば、チームワークが乱れて全体の生産性が低下します。また、特定の人の主張ばかり通るようになるとチーム内に不公平感を感じる方が増え、チーム内の関係がギクシャクするかもしれません。

課題

ワーク・ライフ・バランスを社会に定着させる上で次のことが課題となっています。 ・勤務評価の難しさ ・顧客の同意や理解 ・人材確保 企業には正社員以外に、派遣社員やアルバイトといった非正規で雇用されている人がいます。また、男性社員と女性社員がいる場合があります。 こうした多様な人材が働く会社が、ワーク・ライフ・バランスを導入する場合、個人レベルの公平公正で誰もが納得できる勤務評定や査定といった評価がより難しくなります。 またワーク・ライフ・バランス導入で営業時間を短縮したり、顧客からの緊急の注文に応じられないといったことになれば、顧客の同意や理解が得られず、取引のあった顧客は別のライバル企業にとられてしまうでしょう。 さらに交替しても同じ品質で業務が継続するためには、均等な能力やスキルを有する人材確保が必要ですが、コスト負担や人材確保自体ができないということが多いです。

ワーク・ライフ・バランスを導入、促進に成功している企業

ワーク・ライフ・バランスを導入・促進に問題や課題を抱えている企業であっても、知恵と工夫でそれらを克服し、導入・促進に成功している企業はあります。 そうした企業がワーク・ライフ・バランス導入にあたって、どのように問題や課題を克服したのかと合わせていくつかご紹介します。

企業① イケア

「同一労働同一賃金」を元に、ワーク・ライフ・バランスを導入、促進に成功している企業として、イケアという家具量販店があります。 イケアは正社員、非正規社員そして男性社員、女性社員のいずれであっても、「同じ仕事に対しては賃金は同額」とする制度を導入しました。「同一労働同一賃金」のもと、人事制度や福利厚生面の見直しを行い、ワーク・ライフ・バランスを導入・促進に成功しています。

企業② 伊藤忠商事

次にご紹介するのは伊藤忠商事という総合商社です。この会社は「朝型勤務」を元に、ワーク・ライフ・バランスを導入・促進に成功しています。 「朝型勤務」は「勤務時間を早め、早めた勤務時間の分だけ退社時間も早める」といった勤務形態です。勤務時間を早めることで、顧客からの注文や対応により柔軟に応じることが可能となります。 結果として顧客満足を高め、自由な勤務時間を選択できることが社員満足を高める結果となりました。

企業③ サイボウズ株式会社

最後にご紹介するのはサイボウズ株式会社というIT企業で、「選択型人事制度」を取り入れることによって、ワーク・ライフ・バランスを導入・促進に成功しています。 「選択型人事制度」は同社の抱える離職率の高さという課題克服のため導入され、スタッフごとに違うライフスタイルに応じて、柔軟に働き方が選べる制度です。 こうした柔軟な働き方ができるように人事制度を見直すことで、離職率が大幅に改善されるとともに、優秀な人材が集まりやすくなり、結果として会社の発展につながっています。

まとめ

社会の変化や成熟化、また個人の仕事に対する意識の変化という背景から、ワーク・ライフ・バランスの実現、またそのための働き方改革に向き合う企業は今後ますます増えるでしょう。 しかし、企業ごとに人材の量と質といった経営資源は異なっており、「一律にそうした変革を求めることは難しい」というのが実情です。 こうしたギャップは人事制度など企業の知恵と工夫で乗り越えることを期待しつつ、政府においてもそうした動きを後押しする上で、必要な支援を積極的に行っていくことが求められます。