「尊い」の要約
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意味:「地位が高く高貴」「敬うべき、尊敬すべきである」「貴重、高価である」
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由来:「『たふとし』という文語表現」
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例文:「その方の尊い教えを聴くため、多くの人々が広場に集まった。」
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類語:「崇敬・敬畏」「気高い」「上等・珍しい」
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対義語:「粗末・ありふれた」「軽蔑・侮蔑」
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英語:「noble」「honorable」「precious」
尊いとは
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「尊い」という表現は会話や文章でよく使われます。「尊い」は様々な場面で使える便利な表現ですが、意味合いが強いため、多用しすぎるのもよくありません。「尊い」の意味や使い分けについて学び、適切な使い方をすることが大切です。まず、「尊い」の2つの読み方と「貴い」との違いを解説します。
尊いの読み方①「とうとい」
「尊い」にはいくつかの訓読みがありますが、一番ポピュラーな読み方は「とうとい」です。通常は「とうとい」と読めば問題ありません。 また、「尊い」より見かけることは少ないですが、「尊ぶ」と書いて「とうとぶ」と読みます。他にも、「尊」の一字で「みこと」と読みます。こちらは名前として使われることも多くあります。 「尊」の字は音読みすると「そん」で、「尊敬」をはじめ様々な熟語で用いられます。
尊いの読み方②「たっとい」
「尊い」には「たっとい」という読み方もあります。「たっとい」は昔の読み方で、現代ではほとんど使わることはありません。 日本語には書き言葉の文語と話し言葉の口語があります。平安時代の頃から、文語と口語は使い分けられてきました。 もともと「たふとし」という文語表現があり、口語で「たっとい」が用いられるようになりました。その後、現代読みの「とうとい」が一般的になったという経緯があります。
尊い(たっとい)と貴い(たっとい)の違い
「尊い」と「貴い」は読み方は同じ「たっとい」ですが、意味には違いがあります。 「尊い」には「地位が高い・尊敬すべき・貴重」といった意味があります。「貴い」より対象が広く、敬うべきと感じるものはすべて「尊い」と表現できます。 「貴い」には昔の貨幣を表す「貝」が使われており、「金銭的な価値・身分の高さ・貴重」という意味があります。「尊い」とは違い、精神的な尊敬の気持ちを表す表現ではありません。
「尊い」意味①地位が高く高貴
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「尊い」の1つ目の意味は、「地位が高く高貴」です。地位や階級を意識することの少ない現代の日本では、この意味で「尊い」が用いられる場面は多くはありません。しかし、歴史や小説を知るうえで知っておいた方がいい表現です。例文や類語、英語の表現や対義語についても紹介します。
地位が高く高貴の意味の「尊い」の例文
地位や身分が高いこと、生まれや家柄が高貴なことを「尊い」という言葉で表現する場合の例文は下記の通りです。
例文
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尊い身分でありながら、周囲に気さくに接する人だった。
例文
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由緒正しき家柄の尊いお方で、どこか物憂げな横顔には品格が漂っていた。
地位の高さや生まれの高貴さは、「貴い」を用いて表現することもできます。平等を原則とする現代の日本では、使われる機会は少なくなりました。
地位が高く高貴の意味の「尊い」の類語は「気高い」
地位が高く高貴という意味の「尊い」の言い換え表現には、「気高い」があります。 「気高い」とは、高貴な身分で上品な様子、気品がある様子を指します。現代では、身分の高さだけでなく、高貴さを感じさせるような誇り高い心のあり方を「気高い」と表現することが多い傾向があります。 「尊い」が高貴さを純粋に表すのに対し、「気高い」はおかしがたい雰囲気、近寄りがたい空気をともなった意味で使われるという違いがあります。
地位が高く尊いの意味の「尊い」の英語は「noble」
地位が高く尊いという意味の「尊い」は、英語では「noble」と表現します。「noble」は「貴族階級の・高潔な・崇高な・寛大な」といった意味の形容詞です。「noble」の例文は下記の通りです。
「noble」は身分の高さ以外に、崇高な考え方や行い、堂々として壮大な外観を表す表現としても用いられます。
地位が高く尊いの意味の「尊い」の対義語は「下賤」
地位が高く尊いという意味の「尊い」の対義語は「下賤」です。 「下賤」は「げせん」と読み、身分が低くいやしい様子を指します。単に身分が低いというだけでなく、身分の低さによって精神が醜くなっている状態をいいます。意地汚く自分の利益だけを追い求めることや、視野が狭く他人を貶めるような心の状態を含めて「下賤」と表現します。 「尊い」は肯定的な意味で使われますが、「下賤」は否定的な意味で使われます。
「尊い」意味②敬うべき、尊敬すべきである
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「尊い」の2つ目の意味は、「敬うべき、尊敬すべきである」です。現代では、「尊い」はこの意味で用いられることがほとんどです。自分にとって尊敬を感じるのであれば、生き方・思想・人・行動など対象を問いません。例文や類語、英語の表現や対義語についても紹介します。
敬うべき、尊敬すべきであるの意味の「尊い」の例文
敬うべき、尊敬すべきであるという意味の「尊い」を使った例文は下記の通りです。
例文
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その方の尊い教えを聴くため、多くの人々が広場に集まった。
例文
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当初は、万民の幸福を追求する尊い考えに基づいた計画だったはずだ。
この使い方をする時は、身分の高さは関係ありません。たとえ身分の低い人であっても、尊敬すべき人柄や思想であれば、「尊い」と表現することができます。この意味で用いる時は、「貴い」は使いません。
敬うべき、尊敬すべきであるの意味の「尊い」の類語は「崇敬・敬畏」
敬うべき、尊敬すべきという意味の「尊い」の類語は「崇敬・敬畏」です。 「崇敬」は「すうけい・すうきょう」などと読み、立派な人や神仏をあがめ、心から尊敬することです。「敬畏」は「けいい」と読み、敬いおそれる様子をいいます。 「崇敬」は「尊い」より強い表現で、一点の曇りもなく心の底から敬う様子を表します。「敬畏」は尊敬に加え、自分の力が及ばない存在として相手に圧倒され身を正す様子を表します。
敬うべき、尊敬すべきであるの意味の「尊い」の英語は「honorable・respectable」
尊敬すべきという意味の「尊い」は英語で「honorable・respectable」と表現し、意味は「尊敬すべき・名誉な」「立派な・きちんとした」です。例文は下記の通りです。
前者の方がより尊敬の強い表現です。
敬うべき、尊敬すべきであるの意味の「尊い」の対義語は「軽蔑・侮蔑」
敬うべき、尊敬すべきであるという意味の「尊い」の対義語は「軽蔑・侮蔑」です。 「軽蔑」は「けいべつ」と読み、さげすみ馬鹿にすることです。「侮蔑」は「ぶべつ」と読み、劣ったものとみなし見下すことです。軽蔑の対象は考え方や行動であることが多いですが、侮蔑の対象は人であることがほとんどです。 「尊い」は考え方や行動、人など対象を問いません。自分にとってすばらしいと感心する対象なら、何にでも使えます。
「尊い」の意味③貴重、高価である
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「尊い」の3つ目の意味は、「貴重、高価である」です。身分などではなく、自分にとって貴重・高価と感じられる対象に対して使うことができます。最近ではオタク文化でもよく使われる表現ですが、それについては次の章で詳しく解説します。例文や類語、英語の表現や対義語を紹介していきます。
貴重、高価であるの意味の「尊い」の例文
貴重、高価であるという意味の「尊い」を使った例文は下記の通りです。
例文
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その事故によって、尊い生命が奪われた。
例文
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彼にとって、彼を支える仲間は自分の命と同じぐらい尊い存在だ。
貴重、高価であるという意味は、「貴い」を用いて表現することもできます。希少性があるものでなくても、社会的に価値が認められたものや、自分や誰かにとって価値のあるものでも「尊い」と表現することができます。
貴重、高価であるの意味の「尊い」の類語は「上等・珍しい」
貴重、高価であるという意味の「尊い」の言い換え表現には、「上等・珍しい」があります。 「上等」は品質が高く価値があることをいい、「珍しい」はまれなことをいいます。 「上等」は品質や出来栄えに対して使うことが多く、「尊い」のように品質を超えた価値に対して用いるのは適切ではありません。「珍しい」は希少性を表す表現ですが、高貴というより変わったものや目新しいものに使われることも多々あります。
貴重、高価であるの意味の「尊い」の英語は「precious・rare」
貴重、高価という意味の「尊い」は英語で「precious・rare」と表現し、意味は「貴重・珍しい」です。例文は下記の通りです。
「precious」には「ありがたい・大切な」という意味もあります。「rare」は日本語の「珍しい」と同じ意味です。
貴重、高価であるの意味の「尊い」の対義語は「粗末・ありふれた」
貴重、高価であるという意味の「尊い」の対義語は「粗末・ありふれた」です。 「粗末」は大雑把で品質がよくないこと、「ありふれた」はどこにでもあって珍しくないことをいいます。「粗末」は品質以外に、おろそかな様子や雑な扱いを指すこともあります。「ありふれた」は珍しくないことに加え、取るに足らないと感じている様子を表します。 「粗末・ありふれた」は「尊い」とは違い、ポジティブな意味では使われません。
アニメでは「最上級」の意味で「尊い」を使用する
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最近では、アニメや漫画などのオタク文化でも「尊い」という言葉がよく使われます。オタク文化といえば一時期「萌え」が流行しましたが、最近では「萌え」に代わって「尊い」「しんどい」といった表現が使われるようになりました。 「萌え」は魅力を感じてときめくことをいいます。それに対して、「尊い」はもう少し強い表現であり、作品やキャラ、関係性に対して崇高の念を抱くほど感じ入ったり感動したりする様子を表します。
まとめ
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「尊い」は昔から使われる「身分の高い・尊敬できる・貴重な」といった意味に加え、漫画やアニメに対する情熱を表現する意味でも使われるようになりました。 言葉は時代によって変化し、意味が付け加わったり、そぎ落とされたりします。言葉の持つもともとの意味と、その時代に合わせた使い方の両方を知ることが大切です。