Tモバイルとスプリントの合併が成立へ。ニューヨーク州が上訴断念。

Tモバイルとスプリントの合併が成立へ。ニューヨーク州が上訴断念。

TモバイルUSとスプリントが合併へ

TモバイルUSとスプリントの合併を解説

  • ニューヨーク州など18の州と特別区が合併に反対
  • 米モバイル市場は「ビック4」から「ビック3」に
  • 合併により1位Verizonに対抗する勢力となるか

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アメリカ携帯通信会社の3位と4位の合併

ソフトバンクグループの傘下にあるスプリントは米携帯通信会社の4位に位置しており、TモバイルUSは業界3位と米キャリアの「ビック4」に入る携帯通信会社です。 そのため、18の州や特別区の司法長官らは合併によって料金の値上がりが起きると主張しました。一方、携帯通信会社両社は合併によって競争は激しくなり、料金の引き下げに繋がると訴えてきました。 両社は既に2018年4月に合併を発表しており、米司法省(DOJ)と米連邦通信委員会(FCC)の承認を受けていました。

 

ニューヨーク州が差し止め裁判を起こすも上訴を断念

ニューヨーク州は両社の合併に反対する差し止め裁判を起こしていましたが、今月16日に上訴を断念するとの声明を出し、昨年6月から続いていた裁判は終結しました。 ニューヨーク州を含む14の州と特別区は、両者の合併はカルテル(独占目的の企業連合)に結びつくとし、消費者の利益にならないと合併に反対してきました。 しかし、スプリントとTモバイルUS側は、合併によって巨額投資が必要となる5Gネットワーク建設が容易になり、将来的に上位2社との競争が可能になることで消費者の利益に繋がると一貫して訴えてきました。

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VerizonとAT&Tへの対抗を目指す

米携帯通信会社上位2社(Verizon=1位、AT&T=2位)に水を開けられていた両社は、合併によって上位2社との競争が可能になり、将来的に消費者の利益になると主張しています。 米連邦地裁のビクター マレロ判事も、合併によるシナジーによって上位2社と競争できる企業が生まれることは、消費者に多くの利益を生むだろうとして計画を進めることを認める判決を下しました。

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ソフトバンクが買収したスプリント

ソフトバンクは2013年7月11日にスプリントを約216億ドル(株式の約78%取得)で子会社化し、孫正義社長が同社の会長に就任していました。 当時もスプリントは米国携帯通信会社3位で、子会社化後は米国内のLET網(4G)の整備を進めてきました。孫正義社長は2014年3月に出演した米メディアのなかで、小さな企業の合併によって巨大企業に対抗したいと語っています。 また、同氏は米国のモバイル事業はAT&TとVerizon(ベレゾン・ワイヤレス)の2社の寡占化状態であるとし、TモバイルUSとスプリントの合併によって価格引き下げや技術革新が加速するだろうと述べていました。

以前からTモバイルの買収を模索

ソフトバンクはTモバイルUSの買収を以前から模索しており、スプリントを傘下に入れた同社の孫正義社長は、「収益よりも米国内でのシェア拡大が目的であり、現状の上位2社の寡占化はそれを妨げている」と、両社への対抗心を隠しませんでした。 また、TモバイルUSも昨年11月18日にジョン レジャーCEOが退任し、代わりにマイク シーベルト元社長兼COOがCEOに就任しています。 これによりジョン レジャー氏は同社の取締役となり、スプリントとの合併に専念したと見られています。

 

Tモバイルによる買収でシェア拡大を目指す

米国の大手調査会社ピューリサーチセンターが行った調査(2019年度第1四半期)では、モバイル市場シェアトップはVerizonで40.9%と他を圧倒しています。 次いでAT&Tが28.9%、TモバイルUSは17.3%、スプリント12.1%という順になっており、今回の合併によって両社の獲得シェアはおよそ29.4%になると見られ、2位のAT&Tとのシェア争いは僅差になると見込まれています。 TモバイルUSとスプリントは司法省と取り決めた取引規定に則り、約2万以上のモバイルサイトと複数の販売店舗をシェア4位となるディッシュに売却します。

アメリカ携帯通信が遂に3強化

TモバイルUSのジョン レジャー氏は、合併後もしばらくは価格の引き上げはしないと述べていますが、競合2社の動向によってはその方針も修正される可能性があります。 TモバイルUSは低帯域のサブ6GHz、スプリントは中帯域の2.5GHzの構築に力を入れており、合併によって共同ネットワークは高速で長距離伝送が可能となります。 両社が合併によるシナジーによって上位2社に近づいていることで、アメリカモバイル市場は巨大企業2社の寡占状態から、3強による激しいシェア争いになると見られています。