商社株の特性
商社株は、配当利回りが高く長期保有に適しています。三菱商事・伊藤忠商事・三井物 産・住友商事の商社上位4社の中から伊藤忠商事の有望性が高いことを解説します。今回は伊藤忠商事の株価の変遷やその理由に迫ります。
配当利回りが常に市場平均より高いので「長期保有」に適している
株式投資には大きく2つの戦略があります。1つは自分が買った株価より高い株価で売 却して売却益を期待するキャピタルゲインの戦略。2つ目は、配当を得ることによるインカムゲインを期待する戦略です。商社株は配当利回りが高いことが知られています。
商社株4銘柄と東証の平均利回り推移 (各社の有価証券報告書と東証HPデータより作成) 2019年9月末のデータでは、東京証券取引所の平均の配当利回りが年2.42%に対して、商社株の上位4位である三菱商事が年4.98%、伊藤忠商事が年3.81%、三井物産が年4.52%、住友商事が年4.74%となっています。このように商社株はインカムゲインを期待する出来るので、「長期保有」に適しています。
世界景気の影響を受けるので「投資タイミング」が難しい
商社株が長期保有に適していますが、市場平均より商社株の変動が大きいです。リーマンショック後で一番時価総額が低かった2009年3月期から11年期で比較します。 東京証券取引所全体の時価総額は最も上昇した年度は2015年3月期で年51%上昇に対して、商社株の上位4位の時価総額の合計は、2010年3月期に年65%の上昇しました。 反対に下落が大きかったのは東証の合計が、2016年3月期に-23%に対して、商社上位4社合計は同じく2016年3月期に-27%です。2016年3月期は、2015年8月に「チャイナショック」と呼ばれる大幅下落と、2016年2月に原油も下がる「チャイルショック」と 呼ばれる大幅下落がありました。 商社株は世界景気の影響を受けやすく「投資タイミング」が難しいことが分かります。
伊藤忠商事のリーマンショック以降の躍進
時価総額は商社株4位から2位へ
商社の上位4社の状況は一律ではありません。長らく三菱商事、三井物産のワン・ツーの時代が続いてましたが、2018年3月期に伊藤忠が三井物産を抜いてトレンド的には三菱商事との差を縮めています。
商社株4銘柄と東証の時価総額推移(単位:百万円) (各社の有価証券報告書と東証HPデータより作成) 2009年3月期を100とすると、東京証券取引所全体の時価 総額は2019年9月期で242に対して、三菱商事の193・三井物産の171、住友商事の200と市場平均を下回っています。伊藤忠商事は467となり、市場平均も含めて他を圧倒してます。
商社株4銘柄と東証の時価総額推移(2009年3月を100とする) (各社の有価証券報告書と東証HPデータより作成)
好調の理由は、脱資源・エネルギー
セグメント別で分析すると、伊藤忠商事以外の商社を苦しめているのが、金属とエネルギーの領域です。鉄鋼や銅を初めとする資源と原油の価格の下落の影響は三井物産に一番悪影響を与えています。 伊藤忠商事の躍進の一番の要因は脱資源エネルギーとなる食品事業の比率の高さにあります。2019年3月期にはユニー・ファミマHDの特別利益が大きいですが、900億円を超える収益力があります。代替肉や鰻の完全養殖などで将来性の高い事業性に取り組む不二製油にグループ全体で33%以上の出資しています。
商社株4銘柄のセグメント別利益比較(単位:億円) (各社のIR資料より作成)
伊藤忠商事が1位になる日
伊藤忠商事が三菱商事を抜いて商社1位になる可能性を考察します。三菱商事と三井物産のワン・ツーの時代が続いてましたが資源・エネルギーの価格がV字回復が期待出来る経済環境ではありません。世界中が異常気象にさらされており、食料不足対策の重要度が増して、食品事業の比率が高い伊藤忠商事が相対的に優位になると予想されます。 経営の付加価値の高さを見る指標として、時価総額を連結従業員数で割ると、伊藤忠商事が1人当たり約33百円に対して、三菱商事が約57百万円となります。三菱商事の方が付加価値が7割高いことになりますが、反対に伊藤忠商事の方が事業構造改革による改善の余地が高いとも分析出来ます。
まとめ
配当利回りが高く長期保有に適した商社株の中で、伊藤忠商事が最も長期保有に適していると分析しました。ポイントはセグメント別に分析となります。 IR資料のチェック欠かさないようにして検討銘柄の1つにすることをお薦めします。