サウジアラムコの国内IPO承認。調達額はアリババを超え過去最高額か。企業価値は世界最大
サウジアラムコの上場をサウジ当局が承認
サウジアラムコのIPO上場
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12月に政府系石油会社サウジアラムコが上場
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世界最大の評価額となる見込み・史上最高額の調達額の可能性も
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石油施設へのテロ攻撃のリスクも
一度は延期になっていたが12月のIPO開始へ
サウジアラムコの上場はサウジアラビアの実力者ムハンマド皇太子が進めている改革の目玉でしたが、9月18日に起こった同社石油施設への無人機攻撃により延期となっていました。 市場はサウジアラムコが企業価値が低く評価されることを懸念して、予定していたIPOの時期を先送りにしたと指摘していました。 サウジアラムコ側は当初、今年の12月か2020年1月までの延期を検討していたようです。
史上最高額の調達額になる可能性
今回サウジアラムコが公開する株式での調達額は200億ドルから400億ドルといわれ、2014年に中国のアリババ・グループがIPOで調達した250億ドルを上回る史上最高額になる可能性があります。 サウジアラムコのヤシル・アルルマヤン会長は、投資家向けに「長期的に価値が高まる同社に投資するチャンスになるだろ」と呼びかけています。 サウジアラムコの時価評価額は2兆ドルともいわれ、現在世界最大の米アップルや米マイクロソフとの時価総額約1兆ドルを大きく上回っています。
サウジアラムコ
(画像:Unsplash)
1920年代のサウジアラビアの石油利権は欧米が握っていましたが、1962年に「ソーカル」「テキサコ」「エクソン」「モービル」のアラムコ4社に対し、政府の事業参加を呼びかけたことが石油会社の国有化へと繋がりました。 のちの1988年11月8日、サウジアラビア政府がアラムコから操業権を引き継ぐ形で国営石油会社「サウジアラムコ」が設立されました。
国有の石油会社
サウジアラムコはサウジアラビアの国有石油会社です。国有企業の多くは参入障壁の低い独占市場に参入することが多く、サウジアラムコも石油、天然ガスの採鉱や販売、生産や開発を行っています。 社名の「アラムコ」は英語で「アメリカ」と訳され、国営企業に他国の名称が残っていることは珍しく創業までの歴史を物語っています。
企業価値は2兆ドルとも
サウジアラムコの石油生産量は世界の約1割を占めており、その企業評価額は2 兆ドルともいわれています。 昨年の純利益は1110億ドル(日本円で約12兆円)といわれ、米アップル、米グーグルの親会社アルファベット、エクソンモービルの3社を合計した純利益を上回っています。
サウジアラムコの今後の展望
(画像:Unsplash)
現在の石油生産量のトップはアメリカに移っており、サウジアラビアも将来を石油に頼っていくのは現実として厳しい状況です。 サウジアラムコとしても今回のIPOの成功に向けて、1兆6000億ドルから1兆8000億ドルまで評価額が下がる可能性があることを認めています。原油市場の先細りや国内外の政情不安などのリスクも懸念材料になっています。
海外上場を目標とする
サウジアラムコの会長ヤシル・アルルマヤン氏は、今回のIPOについて「上場させディスクロージャーを充実させる適切な時期だ」と語っています。 現段階では国外取引所の情報開示基準の厳しさもあり、サウジアラビア国内だけで上場させるとしていますが、そう遠くない時期に海外市場への上場もするとみられています。 候補としてはニューヨークやロンドン、香港の取引所で、東証は今のところ外れていますが今後の成り行きによっては候補に挙がる可能性も出てきそうです。
石油施設が攻撃されるなどのリスクなどが懸念される
中東情勢は長年不安定な状態が続き、今年9 月14日にサウジアラムコの石油施設も無人機による攻撃を受けています。 サウジアラビアはイランの過激派武装組織フーシ派から度々攻撃を受けており、今回の攻撃もこの組織によるものと推測されています。サウジアラムコへの投資はこうしたリスクを常にはらんでいるといえます。 一方で、サウジアラビア政府は今年10月14日にソフトバンクグループと共同で政府系投資ファンド「PIF」を設立すると発表し話題になっています。
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企業価値は世界最大へ【追記】
サウジアラムコは11月17日に公募価格を発表しました。 1株30リヤルから32リヤルとして日本円で約870円から930円としています。 また算出された企業価値は1兆6千億ドルから1兆7千億ドルとしており、アップル(1兆1800億ドル)やマイクロソフト(1兆1400億ドル)などを上回り世界最大の企業価値となる見込みです。