老舗百貨店の大沼が破産申請。破産までの軌跡と破産の影響とは。

 

山形の老舗百貨店の大沼が破産申請

1分でわかるニュースの要点

  • 山形県にある百貨店の大沼が破産申請
  • 山形県唯一の百貨店で、創業320年を誇る
  • MTMの介入は正しかったのか?

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大沼の破産とその軌跡

2020年1月27日付けで、大沼は山形地裁に破産申請を行いました。大沼は古くから山形県にあった百貨店で、ピーク時には190億円を超える優良企業でした。そんな大沼が破産に追い込まれたことには、いくつかの理由があります。

 

郊外の大規模商業施設やインターネットの普及により経営悪化

記録によれば大沼の起源は江戸時代にまで遡ります。西暦1700年に設立されたことから、2020年で創業320周年となるはずでした。 大沼は1970年代前後まで順調に売り上げを伸ばしていました。売り上げがピークに達した1993年には約196億円の売り上げを誇ったほどです。ところが1990年代後半から他の大型店の進出によって徐々に低調となっていきました。 2000年代以後は郊外に大規模商業施設が進出したこと、インターネット上の通販が普及したことから、大幅な赤字に転じるようになりました。

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MTMによる支援

大沼は2017年の2月期決算時点で4期連続の赤字を記録していました。この段階で大沼は自力の経営改善に見切りをつけ、投資ファンドのマイルストーンターンアラウンドマネジメント(MTM)から経営支援を受けることを決定しました。 MTMはこれまでにも老舗ゴルフクラブメーカーの本間ゴルフや百貨店のNanak(ななっく)、ヤマトヤシキの再建を行っています。 MTMは2018年に大沼に対して6億円の出資を行い、経営体制刷新を狙ってMTM社長の早瀬恵三を大沼社長へと就任させました。

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MTMからの出資金の還流疑惑

MTMによる大沼再建は順調には進みませんでした。これは大沼への投資を断られた投資会社と、大沼内部の一部幹部がMTMへの妨害を行ったためでした。 妨害工作の中で出資金還流問題がリークされたことで、大沼の経営再建は本格的に迷走を始めました。 MTMの出資金還流問題とは、MTMがホテル運営会社などの外部から調達した大沼への出資金3億円のうち1億円を出資当日に引き上げ、そのままホテル運営会社に返済したという疑惑です。

幾度となく変更される代表取締役

MTMによる再建の迷走を表すかのように、この3年間で大沼の代表取締役が何度も変更されています。 2018年5月に早瀬恵三氏が代表取締役、長沢光洋氏が社長の経営体制となりましたが、4ヶ月後には早瀬恵三氏が1人で社長と代表取締役を兼任することになりました。 その後、2019年3月に早瀬恵三氏が解任されてからは長沢光洋氏が代表取締役に復帰し、社長には永瀬孝氏が就任しました。しかしこれも長続きせず、永瀬孝氏は9月に経営再建の遅れから辞任しました。

 

消費税増税の影響も受け資金繰りに苦戦

大沼は結局MTMの再建計画を見直し、新しい計画の下に米沢市にあった米沢店の閉店などを推進していきました。地元企業エム・エル・シーや山形市長らの支援もありましたが、低調が回復することはありませんでした。 そんな中、2019年10月に消費税増税が導入されたことが、さらに大沼の状況を悪化させます。 増税に伴う売り上げの低下はもちろん、キャッシュレスポイント還元によってクレジット決済が増加したことから、資金繰りが急速に悪化したようです。これによって大沼は取引業者への支払い資金の調達が不可能となりました。

大沼が破産による影響

大沼は良くも悪くも地域に密着した百貨店でした。消費者はもちろん、関連企業の多くが大沼破産で少なからず影響を受けます。大沼倒産の影響がどの範囲にまで及んだのでしょうか?