ルイヴィトンの親会社がティファニーに買収提案
ニュースの要点
-
アメリカの老舗ブランドティファニーがM&Aの標的に
-
ウォッチ&ジュエリー事業の拡大を図るLVMH
-
ティファニーはどちらを選ぶのか・買収劇の行方に注目
ティファニー
オードリーヘップバーン主演映画「ティファニーで朝食を」で有名なティファニーは、1837年9月18日にチャールズ・ルイス・ティファニーとジョン・B・ヤングによって設立されました。 今年5月~7月期決算は、純利益1億3,600万ドル(前年同期比6%減)、売上高10億4,800万ドル(同3%減)と低迷しました。 米国、日本、中国本土に次ぐ香港市場の売上減が影響しました。株価はこのところ100ドルを切っていましたが、買収報道後は120ドル後半と上昇をみせています。
フランス・LVMH
LVMHは1987年、ルイヴィトンとモエ・ヘネシーの合併によって設立されました。ヨーロッパを中心にファッションブランドのルイヴィトンやジバンシーのほか化粧品のディオールなど約60以上のブランドを擁しています。 今年7月~8月決算では、売上高133億1,600万ユーロ(日本円で約1兆5,979億円)と上期に続き増収と業績は好調です。 今年10月17日には米テキサス州にルイヴィトンの工房を設立すると発表しています。
LVMHが約145億ドルの買収提案
(画像:Unsplash)
LVMHはファッションをはじめ化粧品、ウォッチ&ジュエリー、ワインなど傘下のブランド事業も多く、今回のティファニーの買収目的はウォッチ&ジュエリー事業の強化が目的といわれています。 LVMHはティファニーに対して約145億ドル(日本円で約1兆5,660億円)、1株あたり120ドルでの買収提案を出したとされていますが、今のところ両社から正式な発表は出されていません。
ティファニー株は前週比約31%高
ティファニー株は買収報道を受けて急騰し、前週比の約31%高となっています。これはLVMHの提示した1株120 ドルをおよそ10ドル上回っています。 もっともLVMHもこれは織り込み済みの提示ですから、競合が出てこなければこのあたりが買収成立の価格ではないかと見込んでいるようです。 今のところ競合対手として有力なのはLVMHに次ぐブランド複合企業リシュモンですが、もし参戦となると1株あたり160ドル近辺を提示する必要があると市場関係者はみています。
合意するかは不透明
LVMHがティファニーに買収を持ち掛けたのが今年10月の初旬といわれています。ティファニー側は買収価格などを精査している段階といわれており、合意するかは不透明な状況です。 ティファニーが精力的に市場を広げている中国ではティファニーブランドは好調で、ポリオ―ロCEOによると認知度ランキングでも4位から2位になったと強調しています。 ティファニーも自社ブランドに自信をみせていますが、LVMHの提案も妥当との評価もあり市場もその動向を注視しています。
LVMHの目的は市場拡大か
(画像:Unsplash)
LVMHのティファニー買収の目的はウォッチ&ジュエリー事業の拡大が目的ですが、特にアメリカでの市場拡大を狙っています。 アメリカには今年10月17日、テキサス州にファッション・レザー事業の工房を設立しました。これに加えてウォッチ&ジュエリーのティファニー買収でアメリカ市場の拡大を狙っています。
宝飾品の市場
LVMHがアメリカで上げている売り上げは同社の約25%と大きな割合を占めています。しかし、同社の全体の売上のうちウォッチ&ジュエリー事業は4%に留まっており、アメリカ市場向けにもこの事業の強化は必要です。 現在は「ショーメン」「ブルガリ」「フレッド」などのブランドを擁していますが、アメリカの名門ブランドのティファニーは魅力的です。 中国や日本でも認知度が高いティファニーは、同社にとってこれ以上ないブランド企業といえるでしょう。
アメリカの市場
LVMHの進出はアメリカでも歓迎されています。テキサス州の工房はアメリカ国内で3ヶ所目となり、この工房だけで1,000人程度の雇用が見込まれています。 中国との貿易戦争や日本の消費税増税などはLVMHとアメリカの両者にとっての不安要素ですが、この話はそれを解消してくれる足掛かりとなりそうです。 ただ、アメリカのEU(欧州連合)への追加関税により、多彩なブランド事業を展開するLVMHはブランド製品の値上げを検討しているといわれています。
【関連記事】EUの追加関税に関する記事はこちら
まとめ
(画像:Unsplash)
ティファニーにとって今回の買収はそれほど損な話ではないでしょう。同社にとって最大の市場であるアメリカでの売上は減少しており、第2四半期では前年比マイナス4%と苦戦しています。 市場関係者も両社の信頼関係が築ければ成立する可能性は高いと考えています。いずれにしても両社の声明が発表されるのを待つしかないでしょう。