楽天が送料無料化の延期を発表。公正取引委員会の緊急措置命令については触れず。

 

送料無料化の対象店舗を「準備の整った一部店舗」に変更

1分でわかるニュースの要点

  • 楽天が送料一律無料の実施を一部店舗に変更
  • 新型コロナウィルスの影響で出店者に配慮
  • 成功の可否は出店者側の理解如何か

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公取委が独禁法抵触の疑いで介入

楽天がAmazonなどに対抗する形で打ち出していた一律送料無料化の方針を修正しました。楽天の一律送料無料化に対しては公正取引委員会(公取委)が独占禁止法(独禁法)抵触の疑いで介入していました。このたびの方針転換はこの公正取引委員会の動きと関係するのでしょうか。楽天の戦略的方向転換に迫ります。

 

楽天は「法令上の問題はない」と主張

楽天は3月18日から3,980円以上の買い物をした場合の送料を一律無料にする方針を打ち出していました。AmazonやYahooに対抗する形で打ち出した戦略です。 実質的に送料の負担を強いられることになる出店者の団体は公取委に窮状を訴え出ていました。これを受け公取委は独禁法における優先的地位の濫用にあたる可能性があるとして、立ち入り検査等で介入していました。一方の楽天側は法令上の問題はないとして、予定通り3月18日からの一律送料無料を強行することにしていました。

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今回の方針転換理由は公取委に配慮したわけではない

楽天はこのたびの方針転換が公取委に配慮したものかどうかについて明言を避けています。楽天によれば新型コロナウィルスの感染拡大で出店者が影響を受けており、一律送料無料措置は準備ができている出店者のみを対象にすることにしたとしています。 公取委が緊急停止措置を東京地裁に申し立てた件に関して、楽天側は「真摯かつ誠実に受け止める」と述べるにとどめています。

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楽天が反発の中、送料無料にこだわる訳とは?

楽天が公取委の意向に反してここまで強行に一律送料無料にこだわる理由は一体何でしょうか。そこにはeコマースビジネスのライバルであるAmazonとYahooの存在があります。一律送料無料措置の戦略的意味に迫ります。

業界大手のAmazonやYahooへの対抗を意識

eコマースビジネスの巨人はいうまでもなくAmazonです。楽天もYahooもその後塵を拝しているといわざるを得ないのが現状です。そのAmazonの送料システムは非常にわかりやすく、配送センターからの一括配送なので送料が一律です。しかも買い物2,000円以上で送料無料というサービスも実現しています。 楽天としては顧客から寄せられる「楽天の送料システムは店によってまちまちでわかりにくい。」という声に危機感を抱いていました。AmazonやYahooに対抗し、わかりやすさを重重視する若者層を取り込む戦略として、送料一律無料作戦を打ち出さざるを得なかったと考えられます。

 

実証実験では一定基準で顧客数、購買額増加が期待

楽天は一律送料無料の実現に向けて昨年3ヶ月間実証実験を行いました。特定のユーザーに一部店舗で送料が無料になるクーポンを配布し、その効果の検証とともに送料を無料にする価格ラインをどこにするか模索しました。 3,980円というラインはこの実証実験の結果、最も注文価格と購入者数のバランスがとれる価格でした。三木谷浩史社長兼会長によればこの一律送料無料を実現させれば、出店者も10%以上の売上増が見込めるとしています。

今回の送料無料化は効果的な策となるのか

一定の買い物金額を超えたら一律送料無料は確かにわかりやすい仕組みです。顧客が増えることも期待できそうです。ただ問題は出店者側にどれだけ理解が得られるかです。出店者にそっぽを向かれたら楽天のビジネスは成り立ちません。 楽天は出店者からの反発を受けていくつかの対応策を発表しています。送料無料化に対応した加盟店に一定期間支援金を給付する「安心サポートプログラム」の制度を設けることや、楽天の配送サービスや特別運賃プログラムなどの物流支援も発表しました。これらによって楽天が出店者達とワンチームになれるかどうか注目です。