パートやアルバイトでも取得可能な有給休暇。条件や日数、スムーズな取り方は?

パートやアルバイトでも有給は取得可能か?

  • 2019年4月、有給休暇取得が義務化
  • 有給休暇付与の条件と付与日数
  • 有給休暇取得時の給与と注意点

2019年4月から有給休暇取得が義務化されました。有給休暇は全従業員に一律同日数が付与されるものではありません。付与に際して2つの条件が定められており、付与日数は労働者の所定労働日などによります。 付与された有給休暇は、業務に支障がきたすと判断された場合は、使用者が取得時季を変更するよう指示することも可能です。義務化とはなりましたが、その取得時季に関しては予め労使間で相談をし、計画的に取得することが重要です。

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2019年4月から取得義務化の有給休暇

2018年に「働き方改革法案」が成立し、2019年4月より企業は対象社員に年間5日、時季を定めた上で有給休暇を取得させることが義務となりました。対象者として、有給休暇の付与日数が10日以上である全従業員と定められ、この対象者には有期契約の労働者やパートタイム労働者なども含まれます。

有給休暇を取得できる条件

有給休暇の取得が義務化されましたが、有給休暇は誰でも労働者であれば付与されるものではありません。有給休暇の付与には二つの条件があり、定められた期間の継続勤務と全労働日の8割以上の勤務実績が必要です。

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6ヶ月以上継続して勤務

有給休暇は、付与条件として6か月以上継続勤務が必要と定められています。ただし週の所定労働日数が定められておらず、年間の所定労働日数が48日未満の場合は有給休暇付与の対象外となります。

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契約した全労働日の8割以上を出勤

フルタイム労働者、パートタイム労働者に関わらず、有給休暇付与には定めれらた期間の継続勤務と、契約した全労働日の8割以上の勤務実績が合わせて必要です。有給休暇付与の対象者には、有期雇用契約の労働者や管理監督者も含まれます。

半年〜1年半勤務したときの有給休暇日数

有給休暇はその付与条件を満たした場合、6か月目の基準日に一定数付与されます。付与日数は労働者の所定労働時間や所定労働日数によって変わり、フルタイム労働者の場合は、6か月目で10日の有給休暇が付与されます。

週30時間以上または週5日以上のフルタイム労働は10日分

週30時間以上、または週5日以上の勤務条件で就業している労働者を、フルタイム労働者と呼びます。フルタイム労働者の場合、継続勤務の条件と8割以上の勤務実績を満たしている場合、入社から6か月目の基準日に10日分の有給休暇が付与されます。この場合、この付与された基準日から1年以内の5日取得が義務となります。

週4日以下の勤務の場合

1週間の所定労働時間が30時間以下、かつ、1週間の所定労働日数が4日以下の労働者を、パートタイム労働者と呼びます。フルタイム労働者と同じく、継続勤務の条件と、8割以上の勤務実績を満たしている場合、有給休暇が付与されます。 週4日勤務の場合、入社から6か月目の基準日に7日分が、週3日勤務の場合は6か月で5日分が、週2日で3日分、週1日勤務の場合は6か月で1日分がそれぞれ付与されます。

所定労働日数 継続勤務年数
6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月
週4日 7日 8日 9日 10日 11日 12日
週3日 5日 6日 7日 8日 9日 10日
週2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日
週1日 1日 2日 3日 4日 5日 6日

1年ごとに有給休暇日数は1日分増加

有給休暇日数はその所定労働日数などに関わらず、1年ごとに1日分付与日数が増加していきます。パートタイム労働者の場合、週4日勤務であれば3年6か月目、週3日勤務であれば5年6か月目にそれぞれ10日分の有給休暇が付与されるため、年5日の取得義務が発生します。

有給休暇取得の注意点

有給休暇は年5日分に関しては使用者が時季を定め取得させることが義務となりましたが、いつでも自由に有給休暇を取得させられるということではありません。有給休暇はその取得日や時効による消失などに気を付けなければいけません。

所定労働時間が対象、残業や休日出勤は含まれず

有給休暇の取得は所定労働時間が対象となるため、休日や残業時間を有給休暇取得日とすることはできません。有給休暇は通常労働義務のある日、時間にのみ請求できるもので、やむを得ず休日出勤した場合は、代休を申請するか、振替休日で手続きをする必要があります。

2年で時効となる

有給休暇は取得できず未消化となった日数分を翌年度に繰り越すことができます。繰り越しが可能な有給休暇ですが、その付与日から2年間取得されなかった場合は無効となり、取得する権利が消滅してしまいます。

有給休暇で貰える給料の3つの計算方法

有給休暇で支払われる給料に関しては、3つの計算方法があり、使用者はこの中から1つを選びます。それぞれにはメリットとデメリットが存在し、その支払い方法によっては労働者が不利益を被る可能性もある為、予め就業規則にその支払い方法について定めておく必要があります。

通常通り働いた分の賃金

有給休暇の賃金支払い方法として多くの企業で採用されているのが、この支払方法です。労働者が通常の就業時間だけ労働した、として給与が支払われる方法で、賃金の計算が複雑にならないため事務処理が簡便になるという利点もあります。 この支払い方法は、日によって労働時間が違うパートタイム労働者の場合は、取得日によって支払われる賃金が変わるというデメリットもあります。

過去3ヶ月の賃金の合計額・勤務日数をもとにした平均賃金

有給休暇時の賃金支払い方法には「平均賃金」と呼ばれるものもあります。平均賃金では、有給休暇取得日から遡って、直近3か月に支払った賃金の総額をその総日数で割って算出した額を支払います。この総日数には休日も含まれるため、通常通り働いた分の賃金が支払われる場合に比べ、支払われる賃金が減ることがあります。 直近3か月の労働日数が少ないパートタイム労働者の場合、支払われる賃金が極端に少なくなる場合があります。その場合は、直近3か月に支払った賃金の総額に60%を乗じた額を計算し、総日数で割って算出した額と比較、賃金が高くなる計算方法を採用する必要があります。

健康保険の標準報酬日額

有給休暇の賃金支払い方法として、健康保険の標準報酬月額を30で割った額を支払う方法もあります。標準報酬月額は、健康保険料を決める際の基準となる額で、給与が多いほどこの標準報酬月額も大きくなります。 ただし、この標準報酬月額には上限があり、その他の支払い方法に比べて支払われる賃金が少なくなる場合があるため、予め従業員の代表と労使協定を締結する必要があります。

スムーズな有給休暇の取得方法

有給休暇取得義務化には、取得率が全国的に低い、という背景があります。業務に支障をきたさずにスムーズな有給休暇取得を行うためには、使用者、労働者が取得方法について考え、相談することが重要です。

繁忙期を避けた取得

有給休暇取得義務が発生する5日に関しては、使用者が労働者に聴取の上、時季を定めて取得させることが原則となっています。5日を超える有給休暇を取得する場合は、原則労働者がその取得時季を自由に決められますが、やむを得ない場合、使用者には、時季を変更するよう指示できる「時季変更権」がありますので、予め繁忙期を避ける取得計画が良いとされています。

事前の相談で両者に不都合なく

有給休暇取得義務が発生する5日に関しても、5日以上取得する場合に関しても、労使間の事前の相談が重要です。有給休暇は基本的には計画的に取得するものですので、労働者から事前に希望の取得時季を使用者に伝え、業務に支障をきたさない取得日を設定することが好ましいと考えられます。

パートやアルバイトでも自分の勤務状況を確認し有給を取得

有給休暇は正規雇用、非正規雇用に関わらず、その条件を満たせば誰にでも付与され、取得する権利があります。会社任せにするのではなく、自身でも勤務状況をしっかり把握し、与えられている権利を行使するという意識が大切です。