ニッチの基本の意味は「すきま、場所」
「ニッチ」の意味は「すきま、場所」です。一般的に気にとめられていない狭い空間のことを「ニッチ」といいます。「気にとめられていない」という意味が転じて、少数派を表すこともあります。 大多数に埋もれてしまわないことが「ニッチ」の要件です。そのため、「一風変わった」「他とは一線を画す」ものを「ニッチ」と言い表すこともあります。 「ニッチな」という形容詞として使われることが多々あり、「ニッチ産業」のように他の熟語と組み合わせて使われることもあります。
ニッチは英語の「niche」に由来
「ニッチ」は英語の「niche」に由来します。「niche」は、聖像や花瓶などを置くために壁に設けられたくぼみを表します。また、「ちょうどいい場所」という意味から自分の得意分野や才能を活かせる場所を、以下のように「niche」と表現することがあります。 ・I found a niche in this industry. （私はこの産業で自分の得意分野を見出した。） 日本ではマーケティング用語として用いられることが多いですが、英語の「niche」はより幅広い意味で用いられます。
ニッチの様々な業界での意味と使い方
英語では幅広い意味で使われることのある「niche」ですが、日本で「ニッチ」と使う場合は主に3つの意味があります。一般的にビジネス・産業分野で使われる意味と、建築・生物学など特定の分野で使われる意味は異なります。 「ニッチ」の意味を理解し、しっかり使い分けができるようになることが大切です。
産業、市場の分野では「競合性の低い」
一般的なビジネスにおいて「ニッチ」は「競合性の低い」という意味で用いられます。「ニッチ市場」「ニッチ戦略」など名詞と組み合わせて使われることが多いです。例文は下記の通りです。 ・市場調査によって開発されたニッチ商品の売れ行きが好調だ。 数は多くなくても確かなニーズが見込める分野というのは、まだ競合他社に発見されていないため、大きなビジネスチャンスとなります。そのため、「ニッチ」は肯定的な意味で使われるのが一般的です。
建築、インテリアでは「窪み」
建築やインテリアにおいて「ニッチ」は「窪み」という意味で使われ、英語の「niche」に近いニュアンスとなっています。 ・壁面ニッチは、室内を圧迫することなく物を飾ることができるのでおすすめです。 壁をえぐるように作られた窪み、飾り棚のことを「ニッチ」と表現します。彫像や花瓶などを置き、インテリアを楽しむことができます。四角い形をしていたり、アーチ状の形をしていたりと様々なデザインがあります。
生物学の分野では「生態的地位」
生物学において「ニッチ」は「生態的地位」を表します。個々の生物が生態系の中で占める特有の立ち位置や役割や生息場所のことを「ニッチ」といいます。 ・別の種が同じニッチを占めたとき、奪い合いや競争が生まれる。 生物学では、同じ生態的地位をもつ種類同士は共存することができないとされています。そのため、競争が発生し住み分けができるよう異なった進化をすることを「ニッチ分化」と呼びます。
ニッチの類義語と対義語
続いて、「ニッチ」のニュアンスを正しく理解するために、類義語や対義語について解説します。 「ニッチ」は建築や生物学の分野では特定の使われ方をしますが、その他の分野では「競合性の低い」という意味で用いられます。「ニッチ」の意味を理解すれば、マーケティングの考え方をより深く知ることができます。
ニッチの類義語は「マイナー、特異、ブルーオーシャン」
ニッチの類義語は「マイナー、特異、ブルーオーシャン」です。 「マイナー」はあまり知られていないものを指します。肯定的な意味で使われることの多い「ニッチ」に対し、どちらかというとマイナスの意味で使われることが多いのが特徴です。 「特異」は他と全く異なる様をいい、プラス・マイナスどちらの意味でも使われます。数が多いか少ないよりも特徴が際立っている場合に使われます。 「ブルーオーシャン」は競合の少ない分野をいいます。「ニッチ」は競合性の少なさに加え、ニーズそのものが限定される様子を表すため少しニュアンスが異なります。
ニッチの対義語は「メジャー、一般的、レッドオーシャン」
ニッチの対義語は「メジャー、一般的、レッドオーシャン」です。 「メジャー」は有名で広く知られている様をいいます。有名であれば複数の競合が存在することがほとんどなので、「ニッチ」の対義語といえます。 「一般的」は広く行き渡っていることをいいます。「ニッチ」は未開拓の分野に対して使われるので、対義語といえます。 「レッドオーシャン」は血で血を洗うほど競争の激しい、競合の多い分野をいいます。ブルーオーシャンの対義語ですが、「ニッチ」の対義語としても使うことができます。
ニッチ産業、市場の具体例とニッチ戦略
（画像：Unsplash）
「ニッチ」は名詞と組み合わせて「ニッチ産業」「ニッチ市場」「ニッチ戦略」といった使い方をします。実際に「ニッチ」な分野をうまく突いた企業や戦略について解説します。 事例から「ニッチ」の意味を読み解き、正しく使えるようになることが大切です。
コンビニエンス・ストア
コンビニエンス・ストアは、「ニッチ市場」を開拓して成功した事例です。コンビニエンス・ストアがない時代、夜中は店が閉まっているため、買い物ができませんでした。しかし、買い物をしたいというニーズは確かに存在していました。 競争の激しい小売業界でそんな隠されたニーズを汲み、コンビニエンス・ストアは24時間営業という形で市場に参入し、見事成功を収めたのです。 しかし、最近ではコンビニエンス・ストアの数が増え「ニッチ市場」ではなくなりました。そこで、コンビニエンス・ストア各社は「ニッチ商品」の開発に取り組んだり、進出エリアにおいて「ニッチ」な場所を探したりとさらなる戦略を練っています。
ウィンターハルター・ガストロノーム社
ウィンターハルター・ガストロノーム社は「ニッチ戦略」で成功した企業です。同社はホテル・レストランに特化して顧客のニーズを満たす製品を開発し提供することで、世界市場シェアを一気に押し上げました。 「ニッチ戦略」では、必ずしも新しい分野、未知の分野を開拓する必要はありません。特定の分野をより深く狭く絞ることによって、競合他社では提供できないような細かなニーズに応える商品・サービスを提供することも「ニッチ戦略」です。 市場規模をむやみやたらに拡大するのではなく、隙間を縫うようにニーズに応えることが「ニッチ戦略」の一つの形だということが同社の事例からわかります。
