インセンティブとボーナスの違いは対象が個人であるか社員全体であるかです。ボーナス額は基本的に会社の業績に大きく左右されるのに対し、インセンティブはあくまで個人やチーム単位の評価に応じて報奨が決まります。 次にインセンティブと歩合制の違いですが、歩合はインセンティブと違い完全にお金を意味することが多く、いわゆる成果報酬をさします。 インセンティブ制度は「基本給+インセンティブ」ですが、たとえば完全歩合制になると0から100まで報酬額は成果次第になります。
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インセンティブ制度のメリット
従来の日本企業ではあまり見られなかったインセンティブ制度ですが、導入することで企業や社員たちにさまざまなメリットがあります。インセンティブ制度導入には具体的にどのようなメリットが存在するのでしょうか。
社員のモチベーション向上
「仕事を頑張ればインセンティブが出る」「実績を上げれば報酬が貰える」という事実は、社員にとって課題をクリアするための大きなモチベーションにつながります。 また仕事上での達成目標が明確に与えられているため、社員の立場からしても「自分がなにをすべきか」がはっきりし、具体的な行動が取りやすくなります。
成果・実力が正当評価される
インセンティブ制度は周りと比べる相対評価とは違い、各個人の課題のクリアによって評価が決まる絶対評価の側面があります。つまり年次や役職に応じた現在の自分の成果・実力が正当に評価されやすいシステムです。 他社員の成果や実力は関係ありません。与えられた業務をこなせたかどうか、というシンプルな達成基準になります。
社員間での適度な競争を促進
インセンティブ制度は各個人に目標が設定されるため、それぞれが自身の課題解決のために動きます。つまり自分の業務をこなす・実力を高めるという、社内抗争や蹴落とし合いなどは無関係な業務遂行を期待できます。 「あいつが頑張っているなら私も頑張ろう」とお互いに努力する見せあい、なおかつ出した結果を競い合うという社員間の適度な競争を促すことにつながります。
目標達成力の高い人材獲得に
出した成果分だけ報酬が貰えるインセンティブ制度は、実力主義を好む人材にとって魅力的な制度です。優秀であるほど得られる給与や地位は大きくなるため、実力で勝負したいと考える目標達成力の高い人材を引き入れやすくなるでしょう。 日本企業は個人・チームの成果より年齢・勤続年数で評価が決まる年功序列制度が多いことから、年次順での評価を嫌う人物へのアピール材料にもなります。
インセンティブ制度のデメリット
導入にはメリットも多いインセンティブ制度ですが、成果主義ならではのさまざまなデメリットも孕んでいます。「とりあえずやってみよう」「インセンティブだからここに入ろう」と安易に選択すると、実は自分には合わなかったとなりかねません。どのようなデメリットが存在するのでしょうか。
給与が安定しづらい
インセンティブ制度の報酬がお金である場合、安定した給与を見越すのは難しいといえます。おおよそ半期・半年の成果次第で得られる給与は変動するため、次も同じくらい貰えるという保証は常にありません。長期的な資金繰り計画も立て辛いと考えられます。 つまり安定志向の人にとってインセンティブの報酬を当てにするのは少し不安を感じる可能性が高いといえます。
目標達成への強いプレッシャー
明確な目標をクリアしなければ評価されないインセンティブ制度は、同時に目標達成への強いプレッシャーにもなりかねません。たとえば重圧に弱い社員だと、変に意識してミスが出たり実力が発揮できなかったりも考えられます。 そのまま目標達成のプレッシャーに押し潰され続ければ、その社員は延々と成果が出せない悪循環に陥る可能性も高くなります。
社員間の関係性悪化
インセンティブ制度は成果主義の側面を持つため、よくも悪くも個人に強くフォーカスする評価システムです。つまり他人の業務の進捗が自分の目標と関係ないケースだと、同僚同士でも協力し合わない社員が出る可能性があります。 また常に結果を出して報酬を得る社員に対し、妬みや恨みを持つ人物が出ないとも限りません。制度によって形成されるライバル関係は、決してよいものだけではないと理解してお句必要があります。
事務職などインセンティブを導入しにくい職種も
営業や販売と比べ仕事の成果が数値に現れにくい事務職などインセンティブを導入しにくい職種も存在します。そうしたなかでインセンティブ制度を適用した場合、「果たして全従業員で平等の評価システムを構築できるのか」という疑問が出ます。 総務や経理ははっきりとした成績が出にくい業務です。そうした社員からの不満が噴出する恐れもあります。
5種類のインセンティブ制度
仕事への動機づけに効果的なインセンティブ制度はマズローの欲求5段階説を踏襲した5つの種類に分けられます。 生活の安心や安全への欲求を満たすための「金銭・物質」、評価や地位を求める欲求を満たすための「評価」、上司や同僚、先輩後輩との円滑な人間関係によってやる気を増幅させる「人的」、企業や経営者の理念や目標への共感・達成意欲を刺激する「理念的」、そして社員自身のやりたいことや自己実現欲を満たす「自己実現」、以上の5つのインセンティブです。
インセンティブ制度の設計方法や注意点
いざ制度を導入しようと考えた場合、事前に設計方法や注意点を検討しておかなければ、社員になんの影響を与えることなくインセンティブ分のコストを失うのみです。具体的にはどの部分に気をつけばよいのでしょうか。
制度導入の目的を設定
インセンティブ制度を入れる前に、「なぜ導入しなければならないのか」「最終的にどのような結果を望んでいるのか」等の目標を設定しましょう。そして目標達成のために必要な報酬を準備することが重要です。 社員の退職を防ぎたいなら報酬額を上げる、やる気を上げたいなら表彰や地位を与えるなどが考えられます。もし目標にそぐわないインセンティブを設定すると、無駄な労力やお金がかかる危険性も少なくありません。
社員のニーズを知り、制度を具体化する
自社の社員は一体仕事に何を求めているのか、これを知らなければ満足させるインセンティブを用意できません。直接ヒアリングしたりアンケートを取ったりしながら、社員が望む報酬を理解しておきましょう。 「やりがいを求める社風なのか」「お金が欲しい人が多いのか」など、一部の社員だけでなく従業員全体の意見を見ることも大切です。そうした生の声を集め、制度を具体化していくことが必要です。
全職種を対象に、不公平感が生まれないように
インセンティブ制度は全職種を対象に不公平感が生まれないようにすることが大切です。社員全員が納得した上で制度を運用しなければ、会社への信頼を失うことになります。営業や販売が優遇される制度では、全体の納得は得られません。 たとえば間接部門である事務職の場合、売上や利益とはまた別の目標設定が必要です。業務の効率化や備品コストの削減、後進育成への貢献等の評価軸を考えることが重要です。
導入後、定期的に効果・影響をチェック
インセンティブ制度を導入した後は、本当に効果・影響があったかどうかを経過を継続してチェックします。実際に社員に見込んだ効果が出なければ、インセンティブのコスト分に見合わなくなります。 ただし数日や1ヶ月の短いスパンでは効果は確認しづらいため、数ヶ月あるいは数年単位での確認を実施する必要があります。
インセンティブ制度の設計・導入事例
2020年現在日本でもさまざまな企業がインセンティブ制度を設計し、実際に導入を行っています。明確な報酬体系から一風変わったユニークなものまで多種多様です。では実際にどのような導入事例があるのでしょうか。
リクルート
リクルートホールディングスには「ミッショングレード制」と呼ばれるインセンティブ制度が導入されています。ミッショングレード制は社員一人ひとりに課せられた仕事(ミッション)のレベルとその成果によって、最終的に支払われる報酬が変動する仕組みです。 半期ごとに見直しが実施され、個人の能力・スキル・志向等を考慮した業務をその都度任されます。
株式会社メルカリ
メルカリは「個人のパフォーマンスを最大限評価する」を掲げ、2018年1月に絶対評価を押し出した新人事評価制度を設定しました。 2020年現在では成果に応じて無制限に昇給する「Go Bold」をはじめ、社員に株式を与える「RSU(譲渡制限株式ユニット)」など日本では珍しい報酬体系を実施しています。
株式会社オリエンタルランド
東京ディズニーランドでおなじみの株式会社オリエンタルランドでは、従業員を大々的に表彰し特典を与える表彰制度を実施しています。 「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」ではスピリット・アワードの受賞、「ファイブスタープログラム」ではオリジナル記念品贈呈や特別プログラムへの参加、「長時間勤務/サービスアワードプログラム」では今まで働いてきた期間に応じたギフト券や記念品が送られます。
株式会社デンソー
デンソーも大規模な人事制度の見直しが何度も行われ、グローバル基準での評価制度が設定されています。 たとえば2016年には「グローバルマネジメント職」の導入によって、個人が発揮する能力に応じた昇格・評価・報酬の決定を決めています。
レバレジーズ株式会社
ベンチャー企業のレバレジーズ株式会社にはユニークなインセンティブ制度が設定されています。 たとえば社内のコミュニケーションを深めるために使用したランチ・飲み会代を会社から「飲みニケーション代」として支給しています。また一定の条件を満たす社員へのご近所手当や給湯室にある炊飯器を自由に使用できる白米食べ放題などもあります。
インセンティブ制度を効果的に使って社員のモチベーションを向上
コストがかかったり導入後の影響が未知数だったりと、インセンティブ制度は決して万能の方法ではありません。しかし制度を効果的に使うことで社員のモチベーションは向上し、優秀な人材の獲得や育成の成功、業務の生産性の上昇につなげることが可能です。 もし自社で実施したい場合はメリットとデメリットを秤にかけ、どちらがよりよい未来を描けるかの検討をしっかりと行いましょう。
ボーナス査定の仕方とは?会社は何を見て判断するのか?増やすためにできること。ボーナスは会社の業績によって支給額が左右されます。会社への貢献度の高い優秀な社員に還元できるよう独自の査定基準を設けています。ボーナスを多く貰うためには査定の仕組みを理解するとともに努力を怠らないことが大切です。今回はボーナスの査定の仕方を紹介します。