百貨店の売上減が深刻。業績悪化の原因や生き残り戦略は？│ビズキャリonline　仕事と生活

日本百貨店協会によると4ヶ月連続で売上減

1分でわかるニュースの要点

止まらない全国百貨店の売上減少と原因
薄れてしまった百貨店の価値
百貨店各社の生き残り戦略

ドン・キホーテが橘百貨店を買収。経営不振の橘百貨店の再建に自信か？ドン・キホーテを擁するパンパシフィックインターナショナルホールディングスが宮崎県の橘ホールディングスを買収しました。存続できずに身売りする百貨店やスーパーとそれを抱え込んで増収増益を見込んでいくドン・キホーテ。競争が激化する小売業の熾烈な生存競争が見られます。今回はドン・キホーテによる橘百貨店買収劇に切り込みます。

百貨店の売上減が深刻

全国百貨店の売上減少が止まらず深刻な状況となっています。消費増税前に起こったかけこみ需要の反動が薄れてもなお続く業績悪化は何が原因なのでしょうか。低迷する売上の項目や要因から百貨店の現状がみえてきました。

全国的に百貨店の売上は減少している

日本百貨店協会によると2019年は6年連続で全国百貨店の売上高が減少していることがわかりました。全国10都市の中でもわずかながらプラスに転じたのは名古屋と大阪のみで、対前年比で名古屋0.1パーセント、大阪0.8パーセント増でした。商品項目別にみてみると美術品や宝飾品、貴金属を含む雑貨のみが2.7パーセント増で、それ以外は全てマイナスという結果です。

アパレルや家具家電の領域が特に売上減少

1月売上高の速報値では対前年同月比でアパレル項目がマイナス6.8パーセント、家具・家電を含む家庭用品がマイナス8.3パーセントと最も顕著に減少をみせています。主要5品目のうちその他の項目においても前年割れで、ラグジュアリーブランドを含む身の回り品はマイナス1.4パーセント、雑貨はマイナス1.5パーセントで食料品はマイナス0.2パーセントでした。全百貨店の免税売上から紐解くと外国人に人気のある商品順位は化粧品、ハイエンドブランド、食品となっており、インバウンドが百貨店の売上高を下支えしていることがうかがえます。

暖冬や新型コロナウイルスなども大きく影響

国内の動向としては消費増税の反動が続いた11月以降も暖冬や新型コロナウイルスが大きく影響しています。暖冬でコートやジャケットなどの重衣料やマフラー、手袋など冬物ファッションが苦戦を強いられました。またインバウンドでは中国の春節がずれ昨年は2月5日だったのが今年は1月25日だったことを受けて瞬間的に売上を伸ばしました。しかし1月下旬には新型コロナウイルスの拡大により渡航禁止や外出を控えた為に国内外の集客が落ちています。

百貨店の価値が薄れてきている

かつては特別なハレの日の場所にふさわしい高級感のある場所としての百貨店でしたが、社会の流れの中でこれまでとは大きく様変わりしました。昨今の需要の推移から百貨店の価値が変わり、薄れてきていることがわかります。

ネット通販などの普及

スマートフォン普及により消費構造は益々変化し続け、ネット通販はライフスタイルを大きく変えてきました。年齢層に関わらずAmazonやYahoo!ショッピング、ZOZOTOWNなど大手ECサイトでネットショッピングすること自体が当たり前になっています。プチプラファッションの通販サイトではインフルエンサーがコラボするファッションをランキング形式で発表しています。店舗に行かずとも自分の好きな時間に最新情報をチェックしながら商品を購入でき便利になりました。

質が良く安い衣料品メーカの台頭

またユニクロや郊外型ショッピングセンターに入るアパレルのように、高品質で安価なコストパフォーマンスの良い衣料品メーカが勢いを増しています。これらは当初は百貨店と食い合うことはないだろうとの予想がありましたが、消費者の節約志向やキャリア女性の需要の変化に伴い無視できない存在になっています。百貨店向けアパレルブランド主要会社も百貨店の売上高減少と同じく落ち込みが止まらず百貨店向けから主力事業をシフトする動きがみられ、今まで二人三脚だったアパレル市場は縮小の一途をたどっています。

百貨店各社の厳しい現状

長年地域に愛されてきた郊外や地方百貨店の売上不振は10年以上長期減収が続く店舗もあり、かなり厳しい現状にあるといえます。老舗の大手百貨店であっても苦悩の選択を迫られるなど、百貨店各社に深刻な状況がありました。

老舗百貨店の大沼の経営破綻

山形市で創業300年以上の老舗百貨店大沼が先月27日に自己破産を申請し事実上倒産しました。大沼は経営不振が続いており2018年4月からは東京の投資ファンドが再建にあたるも、その後不透明な資金の流れが表面化するなど混乱が続きました。翌年3月には地元事業家をスポンサーに従業員が設立した会社が経営権を取得したところでしたが、消費増税後売上が急減し、新たな億単位の出資を募っても百貨店の高コスト体質は変わらないとみて経営破綻を選択しました。

そごうの閉店とリストラ

そごう・西武を完全子会社に持つセブン＆アイホールディングスの井坂隆一社長は従業員の約2割にあたる1,300人規模のリストラと閉店を発表しました。全国に15店舗あるそごう・西武百貨店のうち5店舗を2021年までに閉店、その他2店舗の売り場を縮小、3店舗を譲渡する方向で進めています。ただセブン＆アイ関係者や投資ファンド関係者からは抜本的な改革とは言い難いとの声が多数あり、不振な百貨店と総合スーパーを好調なコンビニエンス事業が支える構造の立て直しが必要といえます。

百貨店各社の生き残り戦略とは

百貨店業界はネット通販やECサイト、駅ビルに郊外型ショッピングセンターなどのライバルとの様相が変化し、1990年代前半のピーク時に比べると60パーセントの売上高に推移するなど深刻な状況です。生き残り戦略として安定したテナント収入を得る大丸松坂屋百貨店やイベントや催事でファンを獲得する阪急阪神百貨店、ネットと実店舗を融合させるべくEC化を図る三越伊勢丹ホールディングスなど各社しのぎを削っています。これまでの店頭販売主導からいかに時代の流れに合わせて変化していけるかが大きな鍵となりそうです。

老舗百貨店の大沼が破産申請。破産までの軌跡と破産の影響とは。2020年1月27日、山形県に本社を置く老舗百貨店の大沼が業績不振のために破産申請を行い、同日中に破産手続き開始の決定を受けました。大沼は2017年頃から経営が悪化していました。業績回復のための経営再建に着手していましたが、2019年10月の消費税増税の影響を受けて本格的に経営が破綻、今回の破産申請に至ったとのことです。