働き方改革で残業時間は減るのか。対象外となる業種や企業に課せられる罰則とは？│ビズキャリonline　仕事と生活

働き方改革で残業時間は本当に減るのか

働き方改革関連法で残業時間はどうなる

働き方改革関連法とは何か
働き方改革関連法によって残業時間が規制
働き方改革関連法の規制で本当に残業は減らせるか

フィンランドが週休3日制を検討。生産性向上や自由な時間が増えメリットが多い？フィンランド政府が週休3日制や1日6時間労働制の導入を検討すると報道されました。これには誤報の可能性があるものの、週休3日制については労働生産性を向上させるとの報告もあり注目度が高くなっています。すでにオランダではかなり広まっている週休3日制ですが、今後他の国にも広まっていくのかが注目されます。今回は週休3日制をとりあげます。

スシローが2/4、2/5に全店舗で一斉休業。外食チェーンで進む働き方改革。株式会社あきんどスシローは2020年1月10日、日本全国に展開している回転寿司チェーン店スシローを去年に引き続いて2日間一斉休業することを発表しました。スシローは「働き方改革」の推進に熱心なため、今回の施策もその一環と言われています。スシローの業績は回転寿司チェーン業界の中でも群を抜いて好調で、「働き方改革」を成功させた企業として見習う向きが出てきています。

働き方改革とは

働き方改革とは少子高齢化が進む日本で、50年後も国民みんなが活躍できる社会を目指すためのものです。2019年4月には働き方改革関連法も施行され、国が具体的な対策を企業に求めることができるようになりました。

労働時間の長時間化の是正を図る

戦後の高度成長期の時代には、働けばそれだけ給与が上がっていく背景の中で多忙であることが望ましいとされてきました。しかしながら2013年には国連から日本の長時間労働に対して是正勧告がなされ、政府も時代に合った働き方を推進しています。労働基準法の改正では時間外労働時間の上限を設けることを軸に、労働者の過労死やメンタル不調の原因を少なくすることを目指しています。

中小企業は2020年4月から施行、大企業は導入済

働き方改革関連法は大企業では2019年の4月にすでに施行・実践されており、中小企業では2020年4月から施行されています。残業時間の上限規制や年5日の有給取得義務などには違反した場合に罰則が設けられています。企業が働き方改革関連法にしっかりと対応できているかどうかは、社員の定着率にも影響を及ぼすと思われます。

働き方改革による残業時間の規制

働き方改革関連法が施行されたことにより、決められた以上の残業を行った場合には行政指導ではなく、事業主が罰せられるようになりました。特別な場合以外には、中小企業など多くの事業者が対象となっています。

残業時間は月45時間、年360時間の上限がかけられる

労働基準法第36条に基づく労使協定（36協定）には月に45時間、年間で360時間までの上限基準がありましたが法律上は上限がありませんでした。今回の働き方改革関連法により、法的に36協定と同じ残業時間の上限を定めることができるようになりました。違反すると6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金を支払わなければなりません。

特別な事情がある場合、36協定と条件を満たせば残業時間を延長可

働き方改革関連法では、一時的にまたは特別な事情がある場合に月100時間未満かつ複数月を平均して80時間、年間通して720時間の残業が例外的に認められます。また1年間で6回だけ、１か月につき45時間以上の残業が認められます。この例外規定を使うには、労使の合意があることが条件となります。

残業時間規制の注意点

働き方改革関連法によって、サラリーマンの残業時間が制限されることになりましたが、特例もあります。そして残業時間が法的に規制されることになったので、違反した事業者は罰せられるようにもなりました。

運送業・医師など規制の対象にならない業種・職種あり

運送業の残業時間については2019年の働き方改革関連法の施行の5年後から月平均80時間、年間960時間の上限規制が適用されます。そして将来的には一般業種同様の水準を目指しています。医師の残業時間についても施行から5年間の猶予があるのに加え、勤務医の上限は月100時間未満、年960時間以下にすることを目指しています。

2019年4月より前に締結済の36協定には上限が課されない

働き方改革関連法によって変更された「新36協定」を結んでいなければ、残業時間の上限は規制されません。一般的には36協定届の有効期限は1年間ですから、そのタイミングできちんと書類をかわしていれば問題ないでしょう。大企業では2019年4月からすでに、中小企業でも2020年4月からは働き方改革関連法と新36協定がスタートしているはずです。

上限を破ると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

働き方改革関連法では残業時間の上限規制に違反した企業には6か月以下の懲役か30万円以下の罰金が課されます。以前は行政指導のみだったことと比較すると、厳罰化していることがわかります。年5日の有給取得と月60時間以上の残業をした場合の割増賃金を50％以上にすることについても同様の罰則が設けられています。

法定労働時間と所定労働時間の違い

法定労働時間と所定労働時間には、勤務時間のどの部分を指すのかについての違いがあります。働き方改革関連法で上限が決められる残業時間は、法定労働時間を超過した分のことを指しています。

所定労働時間を超えると｢残業｣になる

労働基準法にある所定労働時間は1日で8時間、週に40時間です。就業時間の後にこれを超えた部分が「残業時間」になります。 8時から17時までの勤務で休憩を1時間挟み、その後18時まで働いたとすると、18時までの勤務時間は実質8時間ですから、残業したとはいえないことになります。

残業していても法定労働時間内の場合は違法ではないと判断

法定時間内残業とは前述した法定時間外労働とは違い、企業が定めた所定労働時間を超え法定労働時間内までの範囲の残業を指します。企業によっては法定時間内残業についても割増賃金を払っている場合がありますが、法定時間外労働とは違って法律上の義務はありません。そのため残業が発生していても法定労働時間内なのであれば違法ではないと判断されます。

働き方改革で残業時間は本当に減るのか

私たちの残業時間は働き方改革関連法で本当に減らすことができるのでしょうか？法律の施行後に仕事量が減らなければ、時間が減った分を補おうと、勤務前や持ち帰りで「隠れ残業」が増えるだけになる可能性もあります。

時間が規制されても業務量は大幅な変化なし

働き方改革関連法によって残業時間の上限が決められますが、業務量についての制限がかけられたわけではありません。そのため勤務時間が短くはなっても、こなさなければならない仕事量は変わりません。むしろ企業によっては以前と同じ量の仕事をより短い時間でやらなければならないこともあります。部下のやり残した仕事を管理職が引き受けるなど、全体的に負担が大きくなっている事例もあります。

持ち帰り残業や就業前・休憩時に勤務する状況が生まれる可能性

早めに出社して就業前に仕事をしたり、休憩時にも仕事をしなければ業務をこなせないことも出てきてしまうかもしれません。また決まった時間に退社しなければならないのなら持ち帰って作業する「持ち帰り残業」が増えることも予想されます。あわせて業務時間中は仕事を早く終わらせることに集中しすぎてしまい、上司やほかの同僚とのコミュニケーションが不足してしまう可能性もあります。

業務の効率化や隠れた残業をさせない会社の環境が不可欠

働き方改革関連法の施行後労働時間が短縮されたあと企業は社員全員の負担が本当に軽減しているかどうか、「隠れ残業」はないかをチェックすることが大切です。人員を増やす解決策もありますが、費用面で難しいこともあります。目標の達成状況のチェックや進捗管理を行い、コミュニケーションを取りながら業務効率化を目指すことが重要です。