豪2番手ヴァージン航空が経営破綻。全日空との提携予定も政府の支援を受けられず。

 

ヴァージン航空が経営破綻

1分でわかるニュースの要点

  • 航空大手がコロナ問題で破綻するのは世界初
  • 黒字を目指し業績立て直し、全日空との提携も
  • 航空産業に広がる倒産懸念、政府支援は急務

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新型コロナウイルスの影響で業績悪化

ヴァージン・オーストラリアは21日、任意管理手続き(日本の民事再生法に相当)の適用を申請すると発表しました。新型コロナウイルスで破綻した航空大手としては世界初のケースです。 同社はコロナウイルスの影響を受け、3月から国際線と国内線のほとんどを運休としてきました。従業員の8割を一時帰休とするなどの対策をとってきたものの、急速な業績悪化で資金繰りが悪化。政府の支援も得られず、今回の事態を迎えました。同国大手企業の中でも初めての破綻事例となります。

 

豪政府に支援を要請も進まず

ヴァージン航空は3月、政府に14億豪ドル(約950億円)の支援を求めていると発表しました。しかし政府は株主に支援を求めるよう促します。 一方、オーストラリア政府は前月22日、国内経済活性化のための「経済刺激パッケージ」を発表します。国内航空会社に対する税の還付や免除などを通じ、総額7億1,500万豪ドル(約486億円)におよぶ支援を行うとの内容でした。 しかしその後31日には主要株主が増資要請に応えなかったことが判明し、破綻の道を歩むことになりました。政府が支援要請に応じなかったのは、特定企業に対する個別支援に後ろ向きだったことが背景にあると言われています。

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元々業績の悪かったヴァージン航空

ヴァージン航空は、国内線で3割のシェアをもち、同国首位のカンタス航空に次ぐ第2位の航空会社でした。しかし内実では7期連続で赤字決算が続き、50億豪ドル(約3,396億円)もの負債をかかえるなど、業績の悪化が続いていました。

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7年連続の赤字で人員削減も行なっていたヴァージン航空

2019年6月期のヴァージン航空の決算内容は、売上高が58億2,700万豪ドル(約3,960億円)、最終利益がマイナス3億1,500万豪ドル(約214億円)となっています。 赤字の背景には、利益率の高いビジネス領域への取り組みが遅れたこと、燃料コストの増大、豪ドルの通貨安、格安航空会社(LCC)との価格競争などがありました。2019年8月には従業員の7.5%にあたる750人をリストラするとの人員削減を発表しています。

2020年3月からは全日空と提携し日本就航予定も延期していた

こうした構造改革を進めることで、ヴァージン航空は2020年6月期の黒字転換を目指していました。 1月17日には全日本空輸(ANA)との提携を発表します。全日空はオーストラリア路線の強化をはかっており、ヴァージン航空との共同運航(コードシェア)やマイルの連携などが主な骨子でした。 また3月29日からは日本にも就航し、羽田―ブリスベン路線を1日1便で運行することが決まっていました。業績の立て直しを着々と進める中、コロナ問題が追い打ちをかけた格好です。

 

コロナショックで航空会社の倒産危機

コロナ問題の収束が見えない中、航空会社の破綻懸念は深刻さを増しています。 国際航空運送協会(IATA)は14日、世界の航空旅客収入が最大3,140億ドル(約33兆7,413億円)落ち込むとの見通しを発表しました。これは前年の数字に比べて半分以下という水準です。

ANAHDも業績の下方修正

日本の航空業界でも、破綻回避の動きは急速に広がっています。 ANAホールディングス(HD)は20日、1〜3月期の連結最終損益がマイナス594億円になったと発表しました。当初予想は75億円の黒字です。2003年に四半期決算の開示を始めて以来、最大の赤字幅を記録しました。 2020年3月期の業績予想も見直しを行い、営業利益は1400億円から600億円へ、経常利益も1370億円から580億円へと下方修正しています。グループ全体で半数にあたる2万人を一時帰休とする決定も行いました。 毎月の固定費が1,000億円とされる同社は現在、複数の金融機関に合計1兆3,000億円の融資枠設定を申請しています。「政府保証」も要請するとの異例の内容です。