電通が業績予想を赤字に修正
電通が営業利益を赤字修正
-
上場以来初の赤字・海外事業の不振響く
-
買収企業の業績好調で将来債務が膨らむ
-
海外も含め事業の立て直しに迫られる
電通の海外事業の不振
電通では、今回の下方修正の要因の一つに海外事業の不振をあげています。特にオーストラリアではメディア取引環境の変化に加え、大規模なクライアントを失ったことをあげています。 また中国ではメディア取引環境が急速に変化し、現地広告会社との競争が激化したことも不振の理由にあげています。
オーストラリア、中国で競争激化
当期は日本を除くアジア太平洋地域ののれん代による減損減益、オーストラリアでは大口のクライアントを失い、中国ではメディア取引環境の変化に苦しみました。 特に中国では現地にアリババ、テンセントなどのプラットフォーマーが台頭してきたことにより、メディア取引環境が大きく変化したことをあげています。 また、アジア太平洋地域というマクロ環境では不透明感が増しており、特に中国については事業計画を攻めから守りに方向転換させることになりそうです。
連結業績予想で約33億円の赤字
電通によると、連結業績予想約33億円の赤字修正の原因は、日本を除くアジア太平洋地域におけるのれん代の損失を約701億円計上したことをあげています。アジア太平洋地域をひとつの資金生成単位グループとして試算したところ、現在価値を減少させていたことが判明し減損減益として計上した模様です。 同損失は2019年12月16日に公表した通期予想には含まれておらず、この損失を要因として営業利益を約642億円下方修正することになりました。 これにより、増減額はマイナス約642億円、予想額が609億円だったことで、結果33億円の赤字予想となりました。
買収企業の業績好調による債務の増加
電通では買収の際に、そのほとんどを、「アーンアウト」と呼ばれる手法を使っていました。「アーンアウト」は一定額をまとめて支払ったあと、買収企業の業績が好調だった場合は、残りの支払い分に利益を上乗せして支払う手法です。 電通は今期買収による評価損を156億円として計上していました。しかし、買収した企業の業績好調により、「アーンアウト」による将来の支払額が膨らみ債務が増加しました。 電通は2018年までに164社を買収し、傘下に収めています。
海外企業の買収に積極的な電通
近年、電通は海外企業の買収に積極的な姿勢を見せていました。2013年には英国の大手メディアイージスグループを買収し、欧州での事業拡大を狙っていました。 その後は海外のM&Aを加速させ、2018年時点で164社を買収しています。こうした積極的な海外企業の買収によって、世界のメディア業界の中心に上り詰めようとした矢先の赤字修正でした。 今回の下方修正の要因となったのれん代は、アジア太平洋地域も含め2018年現在で約7886億円まで膨らんでいるといわれています。今期の下方修正を受け、今後の事業展開の立て直しに業界の注目が集まっています。