楽天市場で送料無料開始へ
楽天市場の送料無料問題とは
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楽天市場を運営する楽天が送料無料を打ち出した
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送料無料の負担が出品者にかかるため反発が起きている
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出品者は公正取引委員会に調査を求めた
出品者の反対を押し切る形
楽天側の説明によると購入時に発生する送料は出品者が負担するとされています。 送料はこれまで出品者が自由に設定できていたため、3,980円以上が一律で送料無料になれば配送コストの増加が予想されます。このため出品者からは不満が続出しました。 10月には楽天に対抗するために「楽天ユニオン」という出品者による組合も設立され、送料無料化への反対運動が行われています。しかし現在のところ楽天側は応じる姿勢を見せていません。「楽天ユニオン」には10月末の時点で200店前後が加盟しています。
2020年3月18日にサービス開始の予定
楽天は新サービスを「共通の送料無料ライン」と呼称し、開始時期を2020年3月18日にすることを改めて決定しました。 新サービスでは購入金額が税込3,980円以上(沖縄や離島へは9,800円)になった場合送料が一律で無料となるものです。3,980円(又は9,800円)に満たない場合は従来通り出品者が自由に送料を設定することができます。 この新サービスが適用されるのは縦、横、高さの合計が160cm以内の配送品だけです。冷凍冷蔵のクール便、大型宅配便などは送料無料の対象外となります。
公正取引委員会が問題視
今回の楽天の送料無料化騒動は公正取引委員会からも問題視されています。公正取引委員会は10月に独占禁止法違反に抵触する可能性があるという報告書をまとめました。 楽天のように自社のシステムやサービス(楽天の場合はECサイト)を外部の利用者(例えば出品者など)に提供する事業者のことを「プラットフォーマー」と呼びます。 「プラットフォーマー」とは英語の基盤(プラットフォーム)から来ている言葉で、文字通りにサービスの基盤を支配していることから、「プラットフォーマー」は利用者に対して著しく強い権利を有しています。 公正取引委員会によると、こうした「プラットフォーマー」の強権を背景としたサービスの変更は独占禁止法で禁じられている優越的地位の乱用に相当する恐れがあるとのことです。
背景にはAmazonとの競争
楽天の出品者の反発を無視した強引な送料無料化の裏には競合他社のアマゾンジャパンとの熾烈な競争があります。経済産業省によれば2018年の国内ECサイトなどの市場規模は約9兆円にのぼったそうです。「楽天市場」と「Amazon」はそのうちの半分といえる約4兆円を占めています。 ところが2018年12月期楽天はECサイト事業の営業利益が前期比で18%減少してしまいました。一方のアマゾンジャパンは配送コストを下げるために自社物流網を構築しており、ECサイトとして楽天よりも先行している形です。 また「Amazon」には配送料一律400円や有料会員向けに配送料無料も実施するなどいった、楽天にない強みがあります。楽天が送料無料化に舵を切ったのも、アマゾンジャパンに対抗するためと見られています。
現在のEC最大手は楽天市場
ECサイト市場は「楽天市場」と「Amazon」の二強ですが、消費者の利用数でいえば最大手は「楽天市場」です。 マーケティングサービスを行うドゥ・ハウスのECサイト利用の実態調査(複数回答可)では、約75%が「楽天市場」を普段利用するECサイトだと回答して1位になっています。 2位以下は「Amazon」が約70%、「Yahoo!ショッピング」が約36%と続いています。
出品者の訴えは通じるのか?
楽天のサービス変更で送料無料を突きつけられた出品者は厳しい状況に立たされています。送料の負担増が重くのしかかるため、出店規模の縮小又は「楽天市場」からの撤退を余儀なくされる出品者もいるようです。 楽天は現在のところ出品者のそういった現状には反応していません。 事態の鍵を握るのは出品者の組合「楽天ユニオン」の交渉か、もしくは公正取引委員会の動きだと考えられます。特に公正取引委員会の勧告は無視できるものではないので、楽天側も送料無料化の撤回や計画の再考をせざるを得なくなる可能性があります。