東芝が東証一部復帰を申請
1分でわかるニュースの要点
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東芝が東証一部復帰申請
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子会社の不正経理が足かせになる可能性
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背景には政治的な意向も
2017年に債務超過で東証2部に降格
東芝は2006年に買収したアメリカの原子力関連会社ウェスチングハウスが巨額損出を出したことから債務超過に陥り、2017年8月に東京証券取引所二部に降格していました。 ウェスチングハウスは世界的な原発不況の中で巨額損出を出しましたが、一時東芝はこれを隠蔽しました。このため監査法人は東芝の決算について「意見不表明」とし、損出を計上した東芝は2017年3月に債務超過に陥りました。
審査には数ヵ月かかる見込み
当然一部復帰には東証の厳しい審査があります。通常東証の審査は最短3ヶ月とされていますが、審査は長引きそうだとするのが大方の見方です。かつて東証二部から一部に復帰したシャープの場合は5ヶ月を要しています。 過去の不正経理で内部の監査体制が厳しく批判されたことが東証の審査をより厳しくするものと思われます。さらに1月には関連子会社の不正経理問題も発覚していますので、審査は長期化すると予想されます。
東証一部に戻りたい東芝の思惑
このたびの東芝の東証一部復帰申請は株主をはじめ東芝関係者の悲願でした。なぜ東芝はこんなに早く東証一部復帰を申請することになったのでしょうか。東証一部に戻りたい東芝の思惑はどこにあるのでしょうか。
資金調達など成長には優位な一部
東芝が東証一部復帰できれば当然企業の信用力は増し、資金調達などで有利になることは間違いありません。東証二部に降格することは日経平均株価やTOPIXの構成株式から外れてしまうことを意味します。 伝統ある東芝にとっては耐えがたい屈辱であるとともに、株価低迷の直接的な要因でした。投資信託などからの資金流入も当然滞ってしまいました。東芝が企業として成長を続けるためにはなんとしても東証一部復帰を成し遂げ、信用力を回復される必要がありました。
親子上場の解消など着実に問題点は解消
東芝の経営状況は決して悪くありません。足下の決算状況を見ても主要分野では全て黒字化を成し遂げています。 日本企業特有の問題に親子上場というものがあります。親会社が子会社の株式の多くを保有した状態で親子ともに上場する形態です。グローバルスタンダードとしては親子上場は利益相反や企業統治の観点から望ましくないとされています。東芝は子会社の全ての株式を保有する完全子会社化を進め、親子上場による利益相反などの課題を着実に解消してきました。
一部復帰の足枷となる不正会計の発覚
東芝の東証一部復帰には足かせと追い風があります。足かせとなる可能性があるのは東芝の連結子会社である東芝ITサービスの架空取引問題です。一方追い風は東証のルール変更です。このルール変更が東芝の東証一部早期復帰を可能にしました。
子会社の不正会計が発覚
2020年1月東芝は連結子会社である東芝ITサービスに不正会計があったことを明らかにしました。不正経理の内容は循環取引という実態のない架空の取引によって見かけ上の売り上げを膨らませる不正な経理処理でした。 東芝は過去に子会社の巨額損出を隠蔽した前科を持っていることから、今回の東芝ITサービスによる不正経理問題が東芝の東証一部復帰に影響するのではないかとの見方も一部にあります。