旧村上ファンド系のオフィスサポートが東芝機械に対して敵対的TOBを開始 。

旧村上ファンド系のオフィスサポートが東芝機械に対してTOB

2020 年1月17日、旧村上ファンド系のオフィスサポートが東芝機械に対して同月21日より公開買付を実施する予定であることが明らかになりました。 20日に公表された公開買付届出書によれば、公開買付価格は 3,456 円でこれは東芝機械の株価純資産倍率(PBR)が 1 倍程度となる水準とのことであり、過去3か月間の終値平均2,779円と比べると24.8%のプレミアムを加えた金額となります。 また、買付期間は3月4日までの 30営業日としており、買付予定数の上限として設定された 7,500 千株を取得した場合、議決権比率は 43%となります。 本TOBに対して東芝機械は反対意見の表明をしており、敵対的TOBとなりました。最近では、敵対的TOBも余り珍しいことではなくなってきましたが、本件は他とは異なる点があり、注目を集めています。

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オフィスサポートではなく東芝機械による公表

他の案件では見られない一つ目の特異点は、本件TOBを先に公表したのは対象者である東芝機械であり、公開買付者側のオフィスサポートではなかったということです。 東芝機械によると、2020年1月10日にオフィスサポートよりTOBの実施可能性について通知があり、同月13日に22日からTOBを開始する旨の予告、16日には開始を1日繰り上げて21日とする旨の連絡があったとのことです。これを受けて、東芝機械は1月17日に前述の通りTOBが予定されていることを公表しました。 但し、この時点ではTOBの買付価格、買取予定数、TOB期間といったTOBにとって基本となる重要事項が明らかになっていませんでした。東芝機械の市場株価をみると、17 日の終値 3,115 円に対し、翌営業日である 20 日の終値は 3,705 円。オフィスサポートによる TOB 公表日となった翌21 日は高値 4,005 円を付けた後、終値はTOB価格よりも低い3,350円となりました。 敵対的 TOB による価格高騰を期待した投資家が踊らされた格好です。

東芝機械による対抗策とは

東芝機械は2007年より事前警告型の買収防衛策を導入していましたが、2019年6月の株主総 会でこれを更新せず、廃止したばかりでした。 しかし、今回のTOBの予告を受けて、東芝機械は改めて大規模買付行為等への対応方針を導入したことを1月17日に発表します。これが 2 つ目の特異点です。

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17 日に公表された「対応方針」

17 日に公表された「対応方針」では、株主意思確認総会の承認等を条件として、新株予約権の無償割当を実施することが具体的な対抗策として示されました。 新株予約権には、大規模買付行為をしようとする非適格者には権利行使が認められないという差別的取得条項等が付されることとされています。 更に、買付者が会社の求める情報提供等の手続きに従わない場合には、会社は取締役会の判断で当該対抗策の発動が出来るものとされています。 会社の求める手続きとしては、大量買付行為等を実施する 60 営業日前までに趣旨説明書を提出すること、その提出日より 5 営業日以内に株主が判断する際に必要となる情報を提出すること等が示されました。1 月21日に開始されたTOBは、既にこれらの手続きに従っていないことになります。 即ち、オフィスサポートが予告通り TOB を開始することにより、東芝機械は取締役会の判断で対抗措置の発動が出来るようになるという仕掛けが、東芝機械が導入した「対応方針」です。

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オフィスサポートは株主意思確認総会の開催を求める

これに対し、オフィスサポートは株主意思確認総会の開催を求めます。 東芝機械もまずはこれを受け入れて、3月27日に株主総会が開催されることとなりました。取締役会決議による対抗措置の発動を、一旦は回避したことになります。 尚、株主総会開催決定に伴い、東芝機械はTOB期間を4月16日まで延長するようオフィスサポートに対して要請していますが、本項執筆時点では延長はされていません。

次の一手は何か?

東芝機械とオフィスサポート間のメールや書簡のやり取りは随時公表されており、日々新たな論点が出てきている様子を見ることが出来ます。 これまでの両社間のやり取りを見る限り、3月27日の株主意思確認総会までこのまま何事もなく進むとは思えません。むしろ、株主総会における一発勝負にゆだねる前に、何らかの動きがあると見た方が良いでしょう。 本件は、買収防衛策をめぐるコーポレートガバナンスの在り方・考え方にも影響を及ぼし、多くの議論を巻き起こすきっかけとなると考えられます。 そのため、本件の決着まで両者を取り巻く動きから目が離せません。